過去の連載

私の語学スタイル

第 3 回
「言葉にならなくても、伝えなければいけないもの」

003

Style5
カメラは生き物

 カメラマンになるにはどうしたらいいですか、という質問をよく受けるという。須田さんには、その質問の意味がよくわからないそうだ。カメラはボタンを押すだけ。だから簡単。カメラマンになりたかったら、写真を撮ればいい。誰でもカメラマンになれる。絵描きになりたかったら、絵を描けばいい。それだけのことだと言う。芸術にプロもアマもないというのが須田さんの信念だ。
 直感を信じ、ワンカットにつきワンショットという独自のスタイルを貫く。一歩間違えれば無謀とも思える潔さは、どこから来ているのだろうか。
 「例えばこう、縦位置で 1 枚撮るじゃない。そのあと横位置で 1 枚、斜めで 1 枚、引いて 1 枚、合計 4 カット撮ったとするじゃない。絶対、後で見たとき 1 枚目の写真を選ぶんだよね。自分のパッションで、『あ、これだ』って思ったのがいちばんいいから、結局 2 枚 3 枚撮っても、1 枚目を使っちゃうんだよね」
 また逆に、撮れないときはまったく撮れないという。「カメラって生き物なんだよね。全然撮れないときってある。この旅の写真ってワンカットしか撮ってないでしょ。全部で大体1万カットくらい撮ってると思うんだけど、1枚も目をつぶっているものがない。でも仕事で人を撮ってて、調子悪いときってもうバンバン目つぶりがある(笑)。合わせよう合わせようとしても、相手が目をつぶってたときにシャッター押してたりするのね。カメラとの相性が合わない日があったりもする。たぶん、自分自身が乱れてるからだと思うんだけどね。カメラはただの金属の物体なんだけど、すごく、人間のテンションみたいなものを吸収する機械ではある。だからすごく人間的な仕事ではあるよね。それは難しいし、面白いところでもあるね」

Style6
「46 でデビューってありなんですね!」

 旅で数々の写真を撮ってきた須田さんだが、『NO TRAVEL, NO LIFE』出版までの道のりは容易なものではなかった。「日本に帰ってきて友達に見せてたら、すごいいい写真じゃんって言われたり、コンテストに出したら入賞しちゃったりして。あれ、俺って写真上手いの? っていう勘違いから始まった(笑)」 そうして、写真集を出すため出版社に売り込んでいった。しかし、当時不景気ということもあり「写真はいいんだけど……」と断られ続けた。
 「写真展をやったときにも、出版社はもとより、いろいろ芸能人とか作家とかに招待状を送ったんだけど、当然誰も来ないわけよ。こんな無名の、本も出版してない人の写真展なんてさ。そんなことを 9 年間やり続けてたときに、友達が『高橋歩*って人知ってる?』って。そのときちょうど写真展をやってて、どうせこの人もベストセラー作家だし、来てくれないだろうと思いつつもメールを出したら、すぐに返事が来た。ホームページを見てくれて、良い写真ですねって。で、そこから始まったのね。だからそれまでに本当にいろんなところにアプローチしてた」
 当時、須田さんは 46 歳。「『46 でデビューってありなんですね!勇気づけられました!』なんてメールも来る(笑)」 なによりも自分から動くことが大切。読者から様々な相談を受けるという須田さんは、そう語る。

*高橋歩 出版社A-Worksほか代表。HP: http://www.ayumu.ch/

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