ゾウ使いになりたいと思っていた園山さんだが、学校の運営に関わるようになって気持ちは少しずつ変わってきたという。
「私はゾウ使いになれるものならなりたいなって思ってたんですけど、ある程度ゾウさんを扱えるようになってから、なんていうのかな、一緒に暮らしていければ、共生できれば、それでいいんじゃないかって思うようになりました。そんなに無理にゾウ使いになるってこだわらなくてもいいんじゃないかって。ゾウ使いっていうのは、要はゾウさんを調教して、悪い言い方をしてしまえば、お金儲けをするために、ゾウさんにいろんな芸を教えて、こんな芸ができるんですよって観光客に披露して、お金をもらうっていうのが、今は仕事なんですよね。だけど、私の考えでは、ゾウさんはべつにショーなんて芸なんてできなくていいんですよ。ゾウさんはそこいるだけで癒してくれる存在だと思うので」
タイでは、森林伐採のためにゾウに力仕事をさせてきた歴史がある。森林伐採が産業として厳しくなり、これまで使っていたゾウを捨てるという現象が起きているのだという。飼い象は多くの場合、野生の環境に戻されても生きてはいけない。
「そういうことはやっぱり許せなくて、昔あんなにゾウさんを使ったんだから、今はゾウさんを休ませてあげたり、ゾウさんをただ見に来る、こんな暮らししてるんですよって観光客に見せてあげたりとか、そういうことでいいんじゃないかなって思ったんですよ。観光客が来たときには直接こう乗って、山のほうへトレッキングにいったりして、ゾウさんの好きな水浴びとか、ゾウさんの好きな泥遊びだとか、そういうことを観光客の人も一緒にできれば、ゾウさんもうれしいし。観光客も人にもよるかもしれないけど、新鮮じゃないですか。『ああ、ゾウさんってこういうことが好きなんだな』とかそういうこともわかってくれると思うし。そういう、ゾウさんにとっても、観光客にとっても癒しの場所になる学校にしたいです」
ちょうどシーズンオフでゾウ使い学校のお客さんがあまりいない時に、村の中学校で日本語を教えてみないかと村長さんに声をかけられた園山さん。是非やりたいといって週に6時間、全学年の中学校の授業を担当することになった。子ども達とも関われることになり、本当にうれしかったという。
「あれだけ悩んで決めたけど、けっこう実行してみると、道は開けるんだなって、いろんなチャンスがほんとに転がっているんだなっていうのはタイに来てからすごく感じていて、毎日楽しいです」
それでも、始めは自分らしさをどう出していくのか、バランスが難しかったと教えてくれた。
「私は日本人ひとりなので、やっぱり文化の違い、考え方の違い、価値観の違いってほんとにいっぱいあるんですよ。あげればきりがないほど。でもそれを日本ではこうやるんだよとか言ったって、彼らは日本を知らないんだから、理解できるわけはない。私がここに来ている以上は彼らの生活に合わせなきゃいけない。でもすべてそっちに合わせていると、自分が自分でいられなくなっちゃうという気持ちがあって。そこのバランスをとるのが初め難しくて、自分をどこの立場におけばいいんだろうってけっこう悩みました。でも『無理はしちゃだめだよな、譲れないところは譲れないでいいんだよな』って思うようになってきて。受け入れてくれそうなことにはもう積極的にどんどん、彼らに言っていこうと思って」
タイやカレンの文化は絶対に大切にしていかなくてはいけないので、そこは変えられない。それを前提として、それ以外のことに関しては、自分を出せるところは出していこうと活動しているそうだ。
「たとえば、ゾウ使いさんたちに少しでも、英語とか日本語を教えて、観光客の人とコミュニケーションをとってもらう提案をしたり。観光客にとっては地元の食生活は本当に珍しいから、説明が必要だよって言ったり。そのバランスは難しいんですけどね。今は自分らしさっていったら大げさかもしれませんが、そこの焦点がぶれないようにと、心がけてます」
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