過去の連載

私の語学スタイル

第 6 回
インドで見つけた、幸せのかたち

006

Style1
ボジプリしゃべれるんか!

 ヒンディー語ができていちばんよかった、と思うことは? とたずねると、「言葉ができて、はじめて地元の人だと認めてもらえること」だと久田さんは言う。
「地元の人からもそうだし、外国の人からもそうだし、日本人からもそう。たとえば、結婚して1年目くらいのときに、お客さんに『(結婚してるなら)ヒンディー語できるんですね』って聞かれて、『いや、まだできないんです』って言うと、『あ、なんだその程度か』っていう風になる。やっぱり言葉ができてはじめて、そこで生きている人だ、と認めてもらえるようなところがある」
 地元の言葉を話す、ということは、そこに暮らす人々に敬意を払うことでもある。
 「旅行しててもそうだと思うけど、ダンニャワード(ヒンディー語で『ありがとう』)とか、ひとこと言うだけで、にっこりなったりする。日本人でもそうじゃないですか。たどたどしくても、外国の人に日本語で『ありがとう』って言われるとうれしいし。地元の人と仲良くなるには、やっぱり地元の言葉を話す。特に私の住んでいるバラナシでは、ヒンディー語のなかでもボジプリをしゃべると、もう、みんなキャーキャー言って喜んでくれる。ボジプリしゃべれるんか! みたいな(笑) 」

Style6
11歳で結婚?! インド流結婚生活

 インドでは、親の決めた相手との結婚が一般的。都市部などでは変わりつつあるそうだが、恋愛結婚はまだ珍しいのだそうだ。実際、サンジェイさんの家族でも、恋愛結婚ははじめてだったという。
 日本では嫁姑関係の難しさはたびたび話題にのぼるが、インドではどうなのだろうか。たずねてみると、インドのお母さんとうち解けるまでは、ものすごく大変だったそうだ。
 「けんかにはならないんです。お母さんは、ほんとうにいい人なんですよ。ただ、あたりまえだけど、育ってきた環境があまりにも違う」
久田さんは、29歳で結婚するまで「好き勝手に生きてきた」という。それに対し、サンジェイさんのお母さんは、なんと11歳で結婚し、30人以上もの大家族のごはんを作ってきたのだそうだ。
 「ただ、ほんとうにひとつだけ共通点があって、サンジェイさんを愛している。私は妻として。お母さんは母として。その一点だけでつながっていますね」
 国際結婚については、「どんなカップルにも問題はあるし、国籍はそれほど大きな問題ではない」とサンジェイさんは話す。しかし、実際、わかり合えない部分は存在する、と久田さんは言う。
 「ちいさなことでは山ほどあるんですけど、お客さんを待たせたらいけないっていう感覚とかが、極端に違いますね。私は、走って行って、待っているお客さんに『すいませんー!』とか言うんですけど、旦那はそれを見て『君は犬みたいに!』とか言うんですよ」
 「満席で、私はもう、早く料理を出さないと! と思ってカカカカカっと調理をして、けがをしたりすると、『君はなんでそんなあせってるの』と。『え、こんなに待ってるのに』って言うと、『待たなきゃしょうがないじゃないか』と言う。あせったことがないんですよね。だから、わからないんです。私もあせらないという気持ちが絶対にわからないので、もうお互いに認めるしかない。あ、あなたはそうなのね、って」
 「ありがたいことに、すごく忙しいんですね。それで旦那とよくけんかをする。それが、小さい店だから見えるみたいで、お客さんに『あのー、(急がなくて)大丈夫です』とか言われたり」
けんかは、久田さんは日本語、サンジェイさんはヒンディー語でするのだとか。サンジェイさんは、日本語はほとんどわからないのだが、けんかは例外なのだそうだ。
「さんざんけんかして、同じ言葉を使ってるので、やっぱり、ヒンディーで言われるのと同じくらい腹立つらしいです。なにを言ってるかわかるから」
 けんかをしつつも、ほんとうに仲睦まじいおふたり。「けんかするほど仲がいい」という言葉がぴったりなのだ。

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