日本を離れて、気がついた
先生の著作を読んでいても、直にお話を聞いていても、強く伝わってくるメッセージがある。それは“自分らしく生きよう”ということだ。
「フランスで生活してみて、『人生で大切なのは何か』っていう基本のところを改めて確認しました。向こうの人びとは“楽しい”とか“美しい”ということを何より大切にしている。そこのところがすばらしいと感じましたね」
不器用でも、要領が悪くても、自分が「これだ」と思ったものには脇目も振らず、夢中になって取り組む。人びとのそんな姿が印象的だったのだそう。
「何かを集中してやっているときに、『でもみんなからどう思われるかな』とか『生意気だと思われるんじゃないか』とか、そういう意識が働いてしまうのは非常に惜しいと思います。でも、日本の人びとの多くはその意識の中で生まれ育ってきているわけだし、日本語という言葉の性質にも一因はあるかもしれない。だけど、日本の社会に適応しようとするあまり、自分を押しこめて窒息してしまっても仕方がないですよね。そこから脱出するには、ある種の勇気が必要かもしれませんけど」
自身は、「放っておくと、むしろ自分を出しすぎてしまうタイプ」だと話す。
「だからフランスに行ったとき、『ああ、やっぱり自分はこれで良かったんだ』と感じたんです。フランス人の友達にも、『今までに知っている日本人はこうじゃない。君はオリジナルな感じがする』などと言われたことがありました」
自身が海外に出てみて直に手にした確信と、改めて気づくことができた日本の問題点。先生自らが経験し実践していることだからこそ、説得力がある。“心”の感じるままにのびのびと生きたいという人、“私”を見つけだしたいという人に、泉谷先生の言葉はきっと響いてくるはずだ。 (K)