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私の語学スタイル

第 10 回
「なぜ」という気持ちを大切に

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遅れていた韓国語教育

 姜先生のライフワークとなった韓国語教育の始まりも、このときだ。「初めて韓国語を教えることになったのは、大学入学以前に通っていた日本語学校が韓国語講座をやるので手伝ってくれと頼まれたからなんです。本当に、右も左も分かっていないのに、よくやったという感じですね、今思うと」

 日本語で、韓国語をきちんと教えられる人材が不足していた当時、学生をしながらも、何かと韓国語講師をしてくれと声がかかったという。その頃、韓国語を教えるための本は、数冊しか手に入らなかった。日本語学や言語学の研究を始めていた姜先生は、韓国語教育のためのテキストがあまり体系的な説明になっていないことに、不満を感じるようになる。

 「韓国語講師としてだんだん経験を積んでくると、そういった数少ないテキストでは物足りなくなってきて。つまり日本の英語教育とか、当時発達し始めていた日本語教育とかに比べると、体系化がはるかに遅れていたんです。それで、大学を卒業して外国語学校に就職したときに、その学校のテキストの形式をベースにして独自の解説を施して、『韓国語会話入門』を出版しました」

 それから、日本、韓国、中国、台湾等で、日本語教育、韓国語教育、言語学に関する著書を30冊以上出版してきた姜先生。特に、昨年刊行の『なるほど!韓国語』シリーズでは、自身が長年解説に苦労してきた発音変化のルールや体系的に整理された文法説明に取り組んだ。

 「独学の人が疑問に思うようなことには、多少専門的な内容でも、すべて応えていこうと思っていましたし、やっと学習者にとって役にたつ体系化ができたと思っています。ハングル学会の会長に贈ったら目を通してくださって、素晴らしい研究成果だからということで、学会推薦(学会始まって以来、初めての推薦だという)をいただくこともできて、嬉しかったですね。

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