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アメリカの俳句

アメリカの俳句

カテゴリ : 
くもの笑い (ユーモアに関する考察)
執筆 : 
Tom Gally  投稿日 2009-5-27 15:50
日本生まれの俳句が他の言語でも創られるようになったのはよく知られている。私も、約40年前、カリフォルニアの公立小学校で haiku の創作法を習ったことを覚えている。英語圏の子供には、アクセントの強弱が分かりにくいので伝統的な詩は書きにくいが、音節の数だけで長さが決まる haiku は子供でもすぐできるのだ。小学校で私がどういう haiku を書いたか覚えていないが、ウェブでは小学生の haiku が見つかる。例えば、ペンシルバニア州の小学校5年生 Melissa Folk が次の句で Haiku Poem and Art Contest で三位を取った。
I am a flower
Sitting on a lily pad
Looking at the fish
俳句は米国でよく知られているのだが、多様な気候を持つ北米大陸では一律の季語が成立しにくいこともあり、日本のように文化に浸透しているとは言えない。しかし、俳句と同じようにコンパクトで完成度の高いジャンルがある。それは、芸術作品としてあまり認められていないが、gag や one-liner と呼ばれる短いジョークである。

実際、1993年10月25日の『ニューヨーカー』で、Adam Gopnik という評論家は、 Woody Allen が若いときに創ったジョークを American haiku brought to perfection (完成されたアメリカ俳句)と絶賛した。Gopnik氏が取り上げた Woody Allen の gag には次の例がある。
My grandfather, on his deathbed, sold me this pocket watch.

What a wonderful thing, to be conscious! I wonder what the people in New Jersey do.

I am two with nature.

「けち」というユダヤ人のステレオタイプ、ニューヨーク市民が持つ隣のニュージャージー州への偏見、そして to be one with nature (大自然と一体感を持つ)という表現をもじって自然を嫌うマンハッタン住民の気持ちによって、それぞれの gag が成立する。米国のジョークには季題がないが、日本の俳句を理解するには日本の気候や風景を知る必要があるのと同様に、このような「奇題」を知らないと米国の one-liner が理解しにくい。

Woody Allen が真面目な映画監督になって久しい現在、米国のユーモア文化の最高峰は The Onion という雑誌とウェブサイトだと私は思う。将来の学者が21世紀初頭のアメリカ文学を研究する上で必須の対象になるのであろう。 The Onion の素晴らしさについて、後日でも書きたいと思う。

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