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ジョークの文法(その2)

ジョークの文法(その2)

カテゴリ : 
くもの笑い (ユーモアに関する考察)
執筆 : 
Tom Gally  投稿日 2009-11-4 21:40
5月に、文法ネタのジョークについて少し書いたが、その後、そこで紹介した The Onion というユーモア雑誌に、先日、また文法に由来する風刺記事が出た。

見出しは、"United Airlines Exploring Viability Of Stacking Them Like Cordwood"(ユナイテッド航空は「あいつら」を薪の束のように積み重ねることの可能性を検討している)だ。記事の写真でもわかるように、見出しの Them は乗客を指すが、本文にはその指示対象がどこにも書かれていない。

最初のパラグラフでも、不明な them が使われている。
CHICAGO—In its ongoing effort to cut transportation costs and boost profits, United Airlines announced Tuesday that it was exploring the feasibility of herding them into planes and stacking them like cordwood from floor to ceiling.
この記事の背景には、米国の航空業界での激しい競争とコスト削減によるサービスの低下がある。米国の国内便を使う人は "The airlines treat passengers like 「luggage [freight, cattle, animals]." などのようにサービスの悪さを嘆くことが多いので、"United Airlines Exploring Viability Of Stacking Passengers Like Cordwood" のように stack の目的語を明示しても冗談が通じるが、指示対象を伏せたことで The Onion の作者が「乗客の物品化」に間接的に言及できてユーモアをワンランクアップできたのだ。このワンランクアップは、英語の文法、すなわち「stack のような他動詞を使用するとき、目的語の名詞か代名詞を省略できない」と「代名詞が使われる場合、その指示対象が文脈から明確でなければならない」というルールに依存している。日本語など、目的語や代名詞の省略が可能な言語では、これらのルールをわざと「違反」することができないので、同様なジョークが成り立ちにくい。

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