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討議について討議する

討議について討議する

カテゴリ : 
くもの舌 (言葉について気が付いたこと、考えたこと)
執筆 : 
Tom Gally  投稿日 2010-2-25 6:00
来週の月曜日に、「討議について討議する」というシンポジウムで討議することになった。このシンポは、大学生の討議力をいかに強化できるかを追求するプロジェクトの一環として開催される。

昨年の11月には、同じプロジェクトの
シンポジウムで、大学の授業に討議をどのように導入できるかが、さまざまな視点から議論された。しかし、討議の構成、すなわち討議者がどのような内容をどのような順番で発言すべきかについては触れられなかった。それ次第で「良い討議」と「悪い討議」に分かれてしまうはずだが、その違いも見えてこなかった。

討議には、良いものと悪いものが存在すると、我々は経験的によく知っている。討議が終わって参加者や傍聴者が「面白かった」「いろいろ学んだ」「これで次の段階へ進めるようになった」などと考えたら、それは良い討議である。逆に、「このつまらないやり取りはいったい、何のためだったのか」と思ったら、悪い討議である。

「良い討議」と「悪い討議」の対比は、「文法的に正しい文」(grammatical sentence)と「文法的に正しくない文」(ungrammatical sentence)の対比と同様であるはずだ。というのは、討議の良し悪しは、その内容ではなく、形式上の成り立ちで決まってしまうから。文法の場合は、ルールに従って文を作れば、その文が「良」となり、ルール違反を起こすと、文は「悪」となる。文で言っていることは関係ない。チョムスキーの
Colorless green ideas sleep furiously. と Furiously sleep ideas green colorless. はまさに同様の違いだ。論理学では、「女性は人間である。花子は女性である。故に花子は人間である。」という「良い推論」と「女性は人間である。花子は女性である。故に人間は女性である。」という「悪い推論」は同じ。旅行で、「ずんずん目的地に着いた」場合と「迷いまくって道端に座り込んで泣いてしまった」という場合に分かれる、「良い旅」と「悪い旅」の対比にも似ている。

まだ深く考えていないが、もしかしすると討議の良し悪しを決定する文法には次のようなルールがあるかも知れない。(括弧内はルールの仮称。)

  • 各発言はその前の発言と関連する。(継続の規則)
  • 前の発言と関連していない発言は、その後の討議に貢献する。(脱線の制限)
  • 同じやり取りは繰り返さない。(諍いの禁止)
  • 発言の内容は発言者以外の参加者には未だ知られていない。(新鮮さの維持)
  • 討議全体から新しい知識や結論が生まれる。(新規性の追求)

 

ただし、「良い討議」の中で発言がどのような順序で進むべきなのか、またこれらのルールがどのように絡み合っているのかなど、分からないことが多い。特に大学生などが討議の文法をどのように習得して「良い討議」をできるようになるのか、私には不明だ。

月曜日の討議がどんな方向に行くかは現時点ではまったく分からない。(「討議の方向は討議を始めるまで不明だ」を討議の文法ルールに追加しよう。)でも、そこから「良い討議とは何か」という問いへの答えが少しでも見えてきたら、良い討議になるのだろうと思う。

何も貢献しない脱線だが、新しい文法を考えると「Rules Grammar Change: English Traditional Replaced To Be New Syntax With」という The Onion
記事を思い出す。一読をお勧めする。


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