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ザ 中国人

ザ 中国人

カテゴリ : 
くもの舌 (言葉について気が付いたこと、考えたこと)
執筆 : 
k_webmaster  投稿日 2009-4-6 0:20

先日、電車で通勤している間に聞いていた米国の公益ラジオ放送 National Public Radio のニュース番組で、次のようなことを聞いた。


Several Kenyan companies have been bought by the Chinese, raising concerns about a loss of local control.


自分の怪しい記憶に頼っているので忠実な引用ではないが、 the Chinese が会社を買ったという報道を聞いたら、約20年前、日本のバブル期に海外の英語ニュースで the Japanese が多用されたことを思い出す。the Japanese が「先ほど言及した日本人たち」でも「日本政府」や「日本の代表チーム」でもなく「日本人全員」を指すように聞こえる文脈であった。米国や欧州の会社が一人の日本人投資者に買収された場合でも、その人は the Japanese と呼ばれたのだった。今でも、ニュースサイトで検索したら同じような用例が見つかる。


Today, America joins with Russia and the European countries to enjoy Daylight Saving Time. A couple of South American countries go along, but all of Africa and Asia pretty much ignore it. The Japanese don't care one way or the other. (リンク)


ということは、生まれたばかりの赤ん坊でも、高校生でも、年配のタクシー運転手でも、日本人ならサマータイム導入についてどうでもいいと思っているのだ。

この使い方の変なところは、次の引用に見える。出典は米国ニューヨーク州の新聞。


Just as Americans might think of a sea of people on bicycles when imagining life in China, the Chinese have an image of our transportation that symbolizes something unique about us: the yellow school bus. (リンク)


すなわち、中国についてのイメージは一部の米国人(Americans)が持つのに対して、対応する米国についてのイメージは、中国人全員(the Chinese)が持つのだ。

念のために言っておくが、これは米国人に東洋人がみな同じに見えるなど、人種差別的な現象ではない。米国の新聞などでは the Americans が「米国人全員」の意味でほとんど使われないのは確かだが、the British や the Europeans はよく使う。そして、英国や豪州のメディアではやはり the Americans をよく使う。例えば、


If ever there was a time to realise that the Americans don't always do things better, it is now and I was reminded of this again recently when I happened to receive an invitation to attend a 'Greener by Design' Conference in San Francisco for some time in May. (リンク)


他国の人々について the を使うのに自国民については使わないというのは、自分に近い人たちには個人差が見えるから一般化できないとわかるが、外国の人たちについては個人差を考えていないために平気でステレオタイプを思い浮かべてしまうことを意味する。

the は奥が深い。


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