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インド英語に関する記事などでは prepone という動詞がよく取り上げられる。国際的に使用される英語には postpone(延期する)という言葉が昔からあるが、その反対の意味、すなわち「早める」を表すために  prepone がインドで造語されたということである。

先日、大学のスタッフと話していたときに、彼は They have preponed the conference from November to October. と言った。11月に予定されていた国際会議が10月に変更された、という意味だ。南アジア以外では使用されないが、初めて会話で聞くとなかなか便利な言葉だと思った。

次の日、私の帰国スケジュールに関するメールを同じ人に出すことになった。以前、私が乗るゴアからムンバイのフライトが16:40から15:00に変更されたとその人から聞いていたので、メールでは You mentioned that my flight from Goa to Mumbai has been preponed to 15:00 ... と書いた。

私はインド英語の発音がまだ全然できないが、とりあえず、一つの単語を習得した。

インドの英字新聞を読み始めると意味がわからない記事が少なくない。例えば、8月9日の The Times of India(ゴア版)には次のようなセンテンスがあった。

Margao: Pulling up eight panchayats in Salcete for failing to hold a gram sabha meeting in violation of the Goa Panchaya Raj Act 1994, Salcete the block development officer, Uday Prabhudesai, issued notices to the panchayats on Wednesday and ordered them to hold a gram sabha on Sunday (August 12).

私に主に分からなかったのは panchayat と gram sabha だ。両方とも中心的な単語なので、文全体の意味がわからなかった。そして、文脈からは Salcete は地名、Goa Panchayat Raj Act 1994 は法律名、Uday Prabhudesai は人名、そして pull up は「批判する」を意味する動詞と推測できたが、Salceteはどういうところか、Goa Panchayat Raj Act 1994 はどういう法律か分からなかったので、文全体の意味がますます不明になってしまった。

でも、少し調べてみたら、それぞれの表現の意味が判明する。KODで panchayat を検索すると「村の自治組織として選挙されたおよそ 5 人からなる会議体」(リーダーズ英和)だそうだ。gram sabha をウェブで検索すると Gram Sabha means a body consisting of persons whose names are for the time being entered as electors in the electoral roll for a Panchayat と定義が見つかる。すなわち、「panchayat のために登録されている選挙人で構成される評議会」のようだ。

同様に、Salcete は、私が滞在しているマルガオ市が所属する taluka(自治体)だ。Goa Panchayat Raj Act 1994 の全文は数百ページに及ぶが、最初の部分だけを読むと、二層の自治体体制を作るために制定された法律だとわかる。また、 pull up はイギリス口語で確かに「批判する」を意味することを複数の辞書で確認できた。

このようにして、「Pulling up eight panchayats in Salcete ...」というセンテンスの意味をやっと理解できた。すなわち、「Salceteという自治体の開発担当官は、1994年の法律で義務付けられている評議会を開いていない村会に、評議会を開くように命じた」という意味だ。

この記事には panchayat や gram sabha のような「インド英語」もあるが、最初に意味がわからなかったのは、むしろ「インド知識」が私に不足しているからだ。

なお、pull up の意味について自信がなかったのは、私にはイギリス英語に関する知識も不足しているからである。

追伸:上の記事の「Salcete the block development officer」は「the Salcete block development officer」の間違いのようだ。この the の位置のズレは、インド英語ではなく、新聞の編集ミスだと思う。
 

インドの新聞記事ですぐ目に付くインド英語は lakh とcrore だ。例えば、今朝、私のホテル部屋に届いた The Times of India には次の用例があった。

The state’s requirement [for milk] is 4.5 lakh litres per day while the state is producing only 36,000 litres per day.

After a delay of well over three months, the Sharad Pawar-led NCP on Monday sacked minister of state for transport Gulabrao Deokar from the ministry for his alleged involvement in the ₹32 crore Jalgaon housing scam. [「₹」はルピーの略字]

研究社Online Dictionaryでもアクセスできる Oxford Advanced Learner’s Dictionary には、それぞれが次のように定義されている。

lakh /læk/
noun (IndE) a hundred thousand

crore /krɔː(r)/
noun (IndE) ten million; one hundred lakhs

ということで、4.5 lakh litres は「45万リトル」で、 ₹32 crore は「3.2億ルピー」の意味。

lakh と crore はまだ会話で聞いていない(と思う)が、ごく普通の言葉のようだ。

飛人?

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ことばの網 (英語と日本語の新語珍語の紹介)
執筆 : 
Tom Gally  投稿日 2011-3-26 16:30

二週間前から続く大災害には喜べることはまったくないが、先日、イギリス人の同僚から新しい造語の話を聞いたときに少しだけ微笑ましくなった。

 

gaijin という言葉は、だいぶ前から英語に入って、辞書にも載っている。例えば、Merriam-Webster's Collegiate Dictionary には「a foreigner in Japan」と定義されている。(余談だが、日本語では「外人」がアジア人やアフリカ人など、白人以外の外国人を指すかどうかについては日本人の間で意見が分かれているようだ。英語の gaijin についても同じ問題があるかと思う。)

 

今回の震災直後、多くの外国人が日本を脱出したので、造語されたのが  flyjin だ。意味は言うまでもなく「怖くてすぐ飛んで行っちゃった外人」だ。次のような文脈で使われている。

 

From this we can infer that the total number of flyjins is approximately 140,000. This figure does not include the intra-Japan flyjin who relocated to Kansai and other areas.

 

私は、ちょうど大地震の数時間前、翌日梅田で講演するために大阪に行っていたので、ニュースで初めて地震と津波を知った。そして、14日の月曜日に、不気味にも空いていた新幹線で大阪から横浜の自宅に戻った。家は無事だったが、あくる日に大学に行ってみたら、12階の研究室で多数の本が棚から床に落ちていた。それを片付けながら、紙の本をやめて電子本だけを読む決心をしはじめたが、これから長引く電力不足を考えると、太陽の光だけでも読める本はやはり捨てるべきではないと考え直した。

 

いずれにしても、当分の間、横浜と東京での生活と仕事をそのまま続けるつもりなので、私のことを stayjin と呼んでください。

殿下ness

カテゴリ : 
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執筆 : 
Tom Gally  投稿日 2010-8-11 21:50

英語では新し言葉だけではなく新しい形態素も随時に誕生している。ここでは昨年、次の新しい語尾を紹介した。

-dar

-holic

-ista

-itude

-licious

-osity

-palooza

-rati

-space

-tard

abrasiveness(「いらだたせること; 摩耗性」ルミナス英和辞典)から zealousness(「熱心さ, 熱望」同上)まで、多数の例を持つ -ness はもちろん新しい語尾ではないが、新しい意味で使えるようになった。この数年間、次のような例をブログなどで見かけるようになったのだ。

With each Apple conference opening Keynote Speech people wait breathlessly for His Jobness to stride onto the stage and begin telling them about the next magical device headed.

この His Jobness は、言うまでもなくアップル社CEOの Steve Jobs を指す。もちろん、次のウェブ用例に出ている His Barackness はオバマ大統領を指す。

I guess you've all heard by now that His Barackness has just been awarded the Nobel Peace Prize, which he'll be going to Oslo to claim on December 10.

人気歌手の Lady Gaga は女性なので、His ではなく Her となる

Fans of Lady Gaga (like the missus) got an extended preview of Her Gaganess' MGM Grand concert (Aug. 13) this morning on the Today show.

この -ness は happiness、helpfulness、hotness のように「性質・状態・程度などを表す名詞を造る」(新英和大辞典)のではなく、「[His [Her, Your] H- として; 皇族の敬称に用いて] 殿下」と意味する highness に由来する。すなわち、His Jobness は「ジョブス殿下」と同様の意味だ。皮肉度も同じぐらい。

(複数の人の場合は「Their 誰々nesses」になるはずだが、その実例はまだ見つかっていない。)


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