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投稿歓迎

カテゴリ : 
くもの上 (読者からの投稿)
執筆 : 
k_webmaster  投稿日 2009-4-8 0:10

この「ことばのくも」を立ち上げてから一週間が経つ。私は長年、翻訳者、物書き、教育者などの立場で英語と日本語についていろいろ考えてきたので、一人でもこのペースでずっと書きつづけると思う。だが、そのうちに読者の皆さんが私の声に飽きてしまうかもしれない。そのため、皆さんの「ことば」についての観察、反論、愚痴、質問などを大いに歓迎する。面白いご投稿は、「くもの上」のカテゴリーで掲載させていただく。

 

条件はいくつかある。一つは、無駄な論争を避けるため、投稿者の名前(実名でもハンドルネームでも)はここで明らかにしない。もう一つは、ご投稿をここに載せるかどうかは、私の独断で決める。また、大意を変えないが、いただいた文を読みやすくするために短くしたり手を入れたりする場合がある。こうした条件でよろしければ、以下のアドレスまでお送りください。首を長くして待っています。
kotobanokumo■■kenkyusha.co.jp

※「■■」を「@」に換えてください。

ザ 中国人

カテゴリ : 
くもの舌 (言葉について気が付いたこと、考えたこと)
執筆 : 
k_webmaster  投稿日 2009-4-6 0:20

先日、電車で通勤している間に聞いていた米国の公益ラジオ放送 National Public Radio のニュース番組で、次のようなことを聞いた。


Several Kenyan companies have been bought by the Chinese, raising concerns about a loss of local control.


自分の怪しい記憶に頼っているので忠実な引用ではないが、 the Chinese が会社を買ったという報道を聞いたら、約20年前、日本のバブル期に海外の英語ニュースで the Japanese が多用されたことを思い出す。the Japanese が「先ほど言及した日本人たち」でも「日本政府」や「日本の代表チーム」でもなく「日本人全員」を指すように聞こえる文脈であった。米国や欧州の会社が一人の日本人投資者に買収された場合でも、その人は the Japanese と呼ばれたのだった。今でも、ニュースサイトで検索したら同じような用例が見つかる。


Today, America joins with Russia and the European countries to enjoy Daylight Saving Time. A couple of South American countries go along, but all of Africa and Asia pretty much ignore it. The Japanese don't care one way or the other. (リンク)


ということは、生まれたばかりの赤ん坊でも、高校生でも、年配のタクシー運転手でも、日本人ならサマータイム導入についてどうでもいいと思っているのだ。

この使い方の変なところは、次の引用に見える。出典は米国ニューヨーク州の新聞。


Just as Americans might think of a sea of people on bicycles when imagining life in China, the Chinese have an image of our transportation that symbolizes something unique about us: the yellow school bus. (リンク)


すなわち、中国についてのイメージは一部の米国人(Americans)が持つのに対して、対応する米国についてのイメージは、中国人全員(the Chinese)が持つのだ。

念のために言っておくが、これは米国人に東洋人がみな同じに見えるなど、人種差別的な現象ではない。米国の新聞などでは the Americans が「米国人全員」の意味でほとんど使われないのは確かだが、the British や the Europeans はよく使う。そして、英国や豪州のメディアではやはり the Americans をよく使う。例えば、


If ever there was a time to realise that the Americans don't always do things better, it is now and I was reminded of this again recently when I happened to receive an invitation to attend a 'Greener by Design' Conference in San Francisco for some time in May. (リンク)


他国の人々について the を使うのに自国民については使わないというのは、自分に近い人たちには個人差が見えるから一般化できないとわかるが、外国の人たちについては個人差を考えていないために平気でステレオタイプを思い浮かべてしまうことを意味する。

the は奥が深い。

もぐもぐ喋る映画

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ことばの網 (英語と日本語の新語珍語の紹介)
執筆 : 
k_webmaster  投稿日 2009-4-5 0:10

3月16日付けの『ニューヨーカー』で mumblecore という語に出会った。映画評論家の David Denby によると、mumblecore movies は低予算で制作されるインディーズ系の映画だ。そこに登場する若者たちは


. . . spend a great deal of time talking with friends about trivial things or about love affairs that ended or never quite happened.


その若者たちは必ずしも「もぐもぐ」と話すわけではないようだが、この語は2005年に Eric Masunaga という元ミュージシャンの音響技術者によって造られてから、新しいジャンルを指す言葉として定着しているそうだ。

mumblecore という単語の姉妹には、次のような音楽ジャンルがある。定義は「研究社オンライン・ディクショナリー」(KOD)による。


grindcore  グラインドコア《1990 年代に発展したハードロック系の音楽》.
hardcore  ハードコア《1980 年代半ばにパンクロックから発展したロック音楽の一種; テンポが速く, 攻撃的な歌と演奏を特徴とする》
thrashcore  スラッシュコア (=SPEED METAL).


ちなみに speed metal は


非常に早いテンポと重いビートを特徴とする大音響のロック heavy metal にパンクロックの暴力的かつ過激なメッセージを取り入れたもの; 1980 年代後半に New York などを中心に Metallica, Megadeth, Anthrax などのグループが人気を得た; thrash, thrashcore, thrash metal もほぼ同義語


だそうだ。(最後の「ほぼ同義語」の「ほぼ」が面白い。多くの人には thrash も thrashcore も thrash metal も同じように聞こえるはずだが、細分化しがちな音楽サブカルチャーでは厳密に使い分ける人がいるから「ほぼ」が必要だったのだろう。)

辞書では -core で終わる他の音楽ジャンル名が見つからなかったが、ネットでは以下の語を発見できた。


deathcore  "an amalgamation of two musical styles: metalcore and death metal" (リンク)
emocore  "a style of rock music typically characterized by melodic musicianship and expressive, often confessional lyrics" (リンク)
fashioncore  "A derogatory term that became popular in describing hardcore fans who care more about their look ... than the music" (リンク)
mathcore  "a rhythmically complex and dissonant style of metalcore" (リンク)
metalcore  "an umbrella term used to describe fusion genres that incorporate elements of the hardcore punk and heavy metal genres" (リンク)
Nintendocore  "a genre of rock that takes its influence from the 8-bit game processor of the same name" (リンク)


他にもいろいろあろうが、その採集は読者にお任せする。

ネイティブ教授の長々しき説明

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青年の蔵 (『英語青年』の過去記事)
執筆 : 
k_webmaster  投稿日 2009-4-4 0:10

大正5年(1916年)11月15日号の『英語青年』で、もし新しい雑誌の名前を English または Practical English にしたら、その前に The を付けるべきかどうかという問題が上條辰蔵の論文で取り上げられた。その論文の最後に、次のような情報が紹介されていた。


The Practical English は不可

ボストン 野間真綱  

 〔ボストンに在る七高教授野間真綱氏より次の如き端書が来た。―S. K.〕

 拝啓
 English 及び Practical English を雑誌名とする時に the を附する可否の件、諸教授避暑中にて大変遅れ申し候当地諸大学教授は the を附せざる事を可とする方に全然一致し候。其理由として永々しき事を聞かされ候も理窟は却つて日本人の方が明かなれば略し候敬具。 九月十六日

 

1898年創刊の『英語青年』には、日本での英文学や英語学の変遷がうかがえる。ここでは「青年の蔵」の名称で、大学図書館の地下2階集密書架で保存されている『英語青年』の中から、私の目に入った記事を拾ってみる。漢字は新字体に、仮名や句読点は原文どおりにする。

ブログのタイトルについて説明する。

 

ブラウザーを使ってインターネット上で閲覧できるページが Web と呼ばれるのはよく知られている。この名称はもちろん、蜘蛛の巣のように各ウェブページが複雑に繋がり合っていることに由来する。もう少し専門的な表現としては、Google Yahoo などの検索サイトが使っているものだが、ウェブ上のデータを探して索引を作るソフトの名前がある。それは spider. そして、今まで各自のパソコンに保存していたデータをインターネット上に保存することも可能になった。その保存場所は the cloud と呼ばれる。その「雲」に保存されている言葉を「蜘蛛」のように網でつかまえようとするのがこの連載の目的の一つなので、タイトルを「ことばのくも」にした。


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