研究社
研究社 会社案内 採用情報 サイトマップ 書店様向け 教育現場向け

研究社 WEB マガジン Lingua リンガ


読んで味わう ドイツ語文法

13

名詞の複数形

Kleider machen Leute.  馬子にも衣装。
(服が人々を作る)
イダー     ヘン             イテ


ゴトフリート・ケラー
▲ゴトフリート・ケラー

 冒頭の文は、19世紀のスイスの作家ゴトフリート・ケラー(Gottfried Keller: 1819~1890)の短篇小説「馬子にも衣装」(1874)のタイトルです。

 仕立屋の徒弟が、立派な衣装を着ていたためにポーランドの伯爵と勘違いされることで起きるドタバタ喜劇です。日本ではあまり知られていませんが、面白いお話なので、ぜひ読んでみてください。昔は岩波文庫に、『恋ぶみ濫用、馬子にも衣装 他二篇』(関泰祐訳)がありました。他にも、『こねこのシュピーゲル』(中埜芳之訳、東洋文化社)に収録されています。

 さて、Kleider は、単数形 das Kleid[クイト]「服、ドレス」の複数形です。つまり語末の -er は複数形を表す語尾です。また、Leute は英語の people と同様に複数形しかない名詞です。machen は前も出てきましたね。英語の make と語源が同じで、「作る」を意味します。

1. 複数形は5パターン!

 英語では、名詞の複数形は基本的に -s をつけるだけでした。ところがドイツ語では、複数形の語尾パターンは大きく分けて5つあるのです。

変音なし 変音あり
単数 複数 単数 複数
無語尾型 das Zimmer die Zimmer der Bruder die Brüder
ツィマー  ツィマー  ーダー リューダー
部屋 兄/弟
E型 der Freund die Freunde der Sohn die Söhne
イント インデ  ーン  ーネ    
友だち 息子
(E)N型 die Schwester die Schwestern なし
シュヴェスター シュヴェスターン
姉/妹
die Uhr die Uhren
ーァ  ーレン 
時計
ER型 das Kleid die Kleider das Buch die Bücher
イト  イダー  ーフ  ビューヒャー
衣装
S型 das Baby die Babys なし
ビー  ビース 
赤ちゃん

 なお、英語語源の言葉でも、S型では単純に -s をつけていきます。つまり、ドイツ語では baby – babies のような変化はせず、Babys が複数形となります。

2. 慣れると勘でわかるようになる?

 変化パターンが多くて、大変そうですね。しかし、少しドイツ語に慣れてくると、名詞がどの複数形のパターンをとるのかがわかるようになります。いくつか例を挙げましょう。


1) -e で終わる名詞は、ほとんど (E)N型

die Tomate — die Tomaten トマト
           トーテ                        トーテン

2) -er で終わる職業などを表す男性名詞は、ほとんど無語尾型

der Lehrer — die Lehrer 先生
           ーラー                         ーラー

3) 比較的新しい外来語(特に英語由来)は、S型が多い

das Handy — die Handys 携帯電話
             ンディ                       ンディス

4) -ion / -tät などで終わる女性名詞は、(E)N型

die Diskussion — die Diskussionen 議論
         ディスクスィーン                   ディスクスィーネン

 他にもいくつか規則性がありますので、自分で探してみると、さらにドイツ語の面白さが分かってくると思います。


練習1

 上の例をヒントに、次の名詞の複数形を言ってみましょう。

1. die Universität 大学
       ウニヴェァズィート

 

2. das Taxi タクシー
          クスィ

 

3. der Fahrer 運転手
        ファーラー

 

4. die Straße 通り
        シュトーセ

 

3. 複数形の格変化

 もう気づいた方もいると思いますが、複数形になると、単数形の性は関係なくなり、定冠詞は1格(Nom.)の場合、すべて die となります。では、他の格ではどうなるか、「服、ドレス」を意味する das Kleid — die Kleider で見てみましょう。

単数
複数
1格(Nom.)
das Kleid
die Kleider
         クイト
     クイダー
4格(Akk.)
das Kleid
die Kleider
3格(Dat.)
dem Kleid
den Kleidern
       クイダーン
2格(Gen.)
des Kleides
der Kleider
        クイデス

 複数でも、1格(Nom.)と4格(Akk.)は同じかたちになります。注意してほしいのは、複数形3格では、-n の語尾がつくことです。ただし、語尾が -n と -s の場合には、-n はつけません。

「携帯電話」
「姉/妹」
「時計」
1格(Nom.)
die Handys
die Schwestern
die Uhren
   ンディス
   シュヴェスターン
   ーレン
4格(Akk.)
die Handys
die Schwestern
die Uhren
3格(Dat.)
den Handys
den Schwestern
den Uhren
2格(Gen.)
der Handys
der Schwestern
der Uhren

なお、英語と同様に、不定冠詞には「ひとつの」という意味があるので、複数形がありません。

4. 実際の複数形の例

 では、複数形を含んだ有名な言葉を見てみましょう。まずは、ベートーヴェン(Ludwig van Beethoven: 1770-1827)の『交響曲第九番「合唱付」』(1824)から。以下は、第4楽章で「歓喜に寄せて」の歌が始まる前に、ベートーヴェンがつなぎの言葉として入れた歌詞の最初の1行です。

O Freunde, nicht diese Töne!
ー フインデ      ヒト   ディーゼ   ーネ
おお、友らよ、これらの響きではなく!

 この呼びかけでは、演奏者、歌い手、そして聴衆が一体になるように求められているわけです。

 今度は逆に、宣戦布告のような過激な言葉を紹介しましょう。作家ゲオルク・ビュヒナー(Goerg Büchner: 1813-1837)は、志を同じくする者と政治的なパンフレット「ヘッセン急使 (Der Hessische Landbote)」(1834) を書きます。以下はそのモットーと言える言葉です。

Friede den Hütten, Krieg den Palästen!
ーデ    ン   ヒュテン      クーク    ン  パーステン
小屋には平和を、宮殿には戦争を!

ヘッセン急使
▲ヘッセン急使(赤枠が引用箇所)

 der Friede(n)「平和」と der Krieg「戦争」は、単数形の1格(Nom.)で、「~よ、(与えられてあれ)」というのがもとの意味です。これを分かりやすく訳すと、「小屋には平和を…(与えよ)」となるのです。それぞれの後半部は、複数形の3格(Dat.)です。この2つの名詞の単数形と複数形は次のようになります。

die Hütte — die Hütten 小屋、ぼろ屋
         ヒュテ                      ヒュテン
der Palast — die Paläste 宮殿
         パースト                  パーステ

 複数形の3格(Dat.)なので、Palästen と -n 語尾がついていますね。なお、オリジナルのビラでは、「宮殿」は"Pallästen" (←単数"Pallast")と、古いかたちで綴られていますが、ここでは現代の正書法で説明しました。

5. その後のビュヒナー


ゲオルク・ビュヒナー
▲ゲオルク・ビュヒナー

 「ヘッセン急使」は、貧困にあえぐ下層民の救済を考えて作られたパンフレットですが、仲間のひとりの裏切りによって、最終的にビュヒナーは亡命に追い込まれます。その後、亡命先のストラスブールやスイスで、圧倒的なイメージに驚かされる作品(「ドイツ文化ひとこと」を参照)をいくつか書くものの、チフスに罹って、23歳の若さでこの世を去ります。



練習2

 次の文を、ヒントを参考に日本語にしてみましょう。

1. Ich habe hundert Freunde.
ヒ  ーベ   ンダート      フインデ
【ヒント】hundert: 100  der Freund, -e: 友人

 

2. In Tokyo sind acht Zoos.
ーキョー ズィント ハト ツォース
【ヒント】acht: 8  der Zoo, -s: 動物園

 

3. Wir essen gern Nudeln.
ヴィーァ セン ァン  ーデルン
【ヒント】essen: 食べる  gern: 好んで
  die Nudel, -n: 麺類(一般に複数形で使います)

 




まとめ

 名詞の複数形には、大まかに見て5つのタイプがあります。名詞を辞書で引くときには、意味や性だけでなく、複数形も確認しましょう。

 3格の複数形では、語尾に -n をつけます(ただし、複数形が -n や -s で終わっている場合にはつけない)。




ドイツ文化ひとこと

 ビュヒナーの文学作品として残されているのは、演劇『ダントンの死』と『ヴォイツェク』(未完)、喜劇『レオンスとレーナ』、短編小説『レンツ』だけで、岩波文庫には『ヴォイツェク ダントンの死 レンツ』(岩淵達治訳)1冊に収まっています。どれも1835年頃に執筆されたものです。この中でも『ヴォイツェク』は、作曲家アルバン・ベルクがオペラ (1925)にしていますし、ヴェルナー・ヘルツォーク監督、クラウス・キンスキー主演の映画(1979)もあります。この作品は、今もアクチュアリティを失っておらず、時代の先を見据えた劇作品となっています。

▲映画『ヴォイツェク』(1979)予告編




第12課
第14課


矢羽々 崇(やはば・たかし) ■ 執筆者プロフィール

1962年岩手県盛岡市生まれ。ミュンヘン大学マギスター(修士)、上智大学博士(文学)取得。獨協大学外国語学部ドイツ語学科教授。専門は近現代ドイツ文学(主に叙情詩)。著書は、『「歓喜に寄せて」の物語――シラーの詩とベートーヴェンの「第九」』(2007年)ほか多数。2000~2002年度および2007年度に「ラジオドイツ語講座」講師、2008~2010年度「テレビでドイツ語」講師を担当。






▲ページトップに戻る

複写について プライバシーポリシー お問い合わせ

Copyright(C)Kenkyusha Co., Ltd. All Rights Reserved.