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読んで味わう ドイツ語文法

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duとer/sie/esで不規則変化する動詞

Die Zeit fährt Auto. 時は車を乗りまわす。
ディ   ツァイト フェーァト オトー


エーリヒ・ケストナー
▲エーリヒ・ケストナー *1

 冒頭の文は、作家エーリヒ・ケストナー(Erich Kästner:1899-1974)が1920年代に書いた詩のタイトルです。詩の中では、次のような文があります。

Die Zeit fährt Auto. Doch kein Mensch kann lenken.
ディ  ツァイト フェーァト オトー ホ    イン  ンシュ       ン       ンケン
時は車を乗りまわす。しかしどんな人間も操作できない。

 時代のスピード感を表す言葉として、よく引用される一節です。

 注意してもらいたいのは、動詞 fährt です。この動詞の不定形は fahren[ファーレン]です。文の主語は die Zeit「時、時代」と3人称単数なので、語尾が -t に変わっていますが、それだけではなく、語幹の a が変音(ウムラウト)になっています。つまり、人称変化で、語幹の母音が変音しているのです。このような変化をする動詞を、不規則変化動詞と呼びます。

不規則変化動詞

 いくつかの重要な動詞は、du と er/sie/es で、語幹が変音します。ただし、他の人称では普通に変化しますのでご安心を。パターンは3つあります。代表的な動詞を、変化表とともに紹介します。

(1) a => ä 型

fahren (乗り物で)行く
ファーレン

ich fahre wir fahren
du fährst ihr fahrt
フェーァスト
Sie fahren
er/sie/es fährt sie fahren
フェーァト

他の例: schlafen 寝る halten 保つ、止まる
シューフェン ルテン

 このタイプの動詞を使った文としては、ゲーテの詩「魔王(Der Erlkönig[ァル・ーニヒ])」(1782)の一節があります。作曲家フランツ・シューベルト(Franz Schubert: 1797-1828)が曲をつけた「魔王」(1815)は、学校の音楽鑑賞の時間に聴いたことがある方も多いのではないでしょうか。第1節で、父と子が夜遅く、馬に乗って家へと急いでいます。

Er fasst ihn sicher, er hält ihn warm.
ァ ファスト ーン ズィヒャー ァ  ルト  ーン  ヴァァム
父は子をしっかり掴み、父は子を暖かく保つ

▲シューベルト「魔王」(引用箇所は0:55~)

 後半部の hält が、halten の3人称単数での変化形です。

(2) e => i 型

geben 与える
ーベン

ich gebe wir geben
du gibst ihr gebt
ープスト
Sie geben
er/sie/es gibt sie geben
ープト

他の例: sprechen 話す nehmen 取る
(du nimmst, er nimmt)
 シュプヒェン     ーメン

 このタイプの動詞が使われた文には、こんなものがありました。

Der Mensch ist, was er isst.
ァ   ンシュ       スト  ヴァス  ァ スト
人間とは、彼が食べているものである。

 19世紀中葉の哲学者ルートヴィヒ・フォイアーバハ(Ludwig Feuerbach: 1804~1872)の言葉です。最後の単語 isst の不定形は essen[セン]「食べる」です。発音は、sein 動詞の変化形 ist と同じなので、詩ではありませんが、韻を踏んでいるわけです。was er isst という言い方は、英語の what he eats と同じです。

ルートヴィヒ・フォイアーバハ
▲ルートヴィヒ・フォイアーバハ

 フォイアーバハは唯物論的な考え方をした哲学者です。唯物論とは物質こそが存在の根源だとする考え方で、そこから、食べ物というモノが人間というモノの生き方を規定する、という思想が出てきたのです。彼の哲学は、同時代のカール・マルクスなどにも多大な影響を与えました。

(3) e => ie 型

sehen 見る
ーエン

ich sehe wir sehen
du siehst ihr seht
ズィースト
Sie sehen
er/sie/es sieht sie sehen
ズィート

他の例: befehlen 命ずる lesen 読む
フェーレン  ーゼン 

 ドイツの諺に、次のようなものがあります。

Du siehst den Wald vor lauter Bäumen nicht.
ドゥー ズィースト ン  ヴァルト フォァ オター    イメ           ヒト
おまえはたくさんの木々を前に森を見ない(木を見て森を見ず)。

 日本にも「木を見て森を見ず」という諺がありますが、これは元々はヨーロッパの諺の翻訳が入って来たもののようです。日本語の自然な言葉遣いを考えれば、「森」よりも「山」と表現しそうなものですね。こうしたヨーロッパ起源の諺は実は結構あって、「豚に真珠」(「猫に小判」)や「一石二鳥」など、探すといろいろあります。また、文化圏が違っても、同じことを考える人はいるもので、日本のことわざと海外のことわざが同じような意味をもつこともあります。例えば、「早起きは三文の得」と同じ内容のドイツ語のことわざとして、

Der frühe Vogel fängt den Wurm.
ァ フリューエ  フォーゲル フェングト ン ルム
朝早い鳥は芋虫を捕まえる。

という表現があります。この文の動詞 fängt は不定形が fangen[ファンゲン]で、語幹の a が ä に変音する不規則変化動詞のひとつです。



練習

 例にならって、不規則変化動詞を変化させてみましょう。

例: Ich fahre Auto. Fährst du auch Auto?
ヒ  ファーレ オトー フェーァスト ドゥー オホ  オトー
私は車を運転する。君も車を運転するの?
1. Ich spreche Deutsch.      du auch Deutsch?
ヒ  シュプヒェ  イチュ                                ドゥー オホ イチュ
私はドイツ語を話す。君もドイツ語を話すの?

 

2. Ich sehe das Schild da.      du auch das Schild da?
ヒ  ーエ   ス  ルト      ー                        ドゥー オホ 
ルト      
あそこの看板が見える。君もあそこの看板が見える?

 

3. Ich schlafe gut.      du auch gut?
ヒ  シューフェ ート                       ドゥー オホ    ート
私はよく眠れる。君もよく眠れる?

 




まとめ

 du と er/sie/es の人称で、語幹が変音する不規則変化動詞がある。他の人称では、規則通りに変化。

 パターンは、a => ä型、e => i型、e => ie型の3種類。

 不規則変化動詞か規則変化動詞かは、辞書でチェック!




ドイツ文化ひとこと

 エーリヒ・ケストナーと言えば、日本では『エーミールと探偵たち』(1929)や『飛ぶ教室』(1933)といった児童文学の作家というイメージが強いかもしれません。しかし、彼は抒情詩も得意とし、時代を強く意識した、批判精神に富んだ作品を数多く残しています。とはいえ、彼は自分の詩を「実用詩」と呼んで、家庭常備薬のように、何かあったときに薬のように使ってもらいたいと述べていました。長編小説『ファビアン』(1931)では、「黄金のベルリン」と呼ばれた1920年代頃のベルリンの退廃的な雰囲気と、その中で暮らす青年の姿が、醒めた視線で描かれます。彼の詩は『人生処方詩集』(小松太郎訳の岩波文庫)で読むことができますし、『ファビアン』は、小松太郎訳(ちくま文庫)と、丘沢静也訳(みすず書房)があります。

エーミールと探偵たち
▲『エーミールと探偵たち』をモチーフとした壁絵 *2



*1 By Basch, [...] / Opdracht Anefo [CC BY-SA 3.0 nl], via Wikimedia Commons
*2 By Fridolin freudenfett (Peter Kuley) (Own work) [CC BY-SA 3.0], via Wikimedia Commons

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矢羽々 崇(やはば・たかし) ■ 執筆者プロフィール

1962年岩手県盛岡市生まれ。ミュンヘン大学マギスター(修士)、上智大学博士(文学)取得。獨協大学外国語学部ドイツ語学科教授。専門は近現代ドイツ文学(主に叙情詩)。著書は、『「歓喜に寄せて」の物語――シラーの詩とベートーヴェンの「第九」』(2007年)ほか多数。2000~2002年度および2007年度に「ラジオドイツ語講座」講師、2008~2010年度「テレビでドイツ語」講師を担当。






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