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読んで味わう ドイツ語文法

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従属の接続詞と副文

Als Gregor Samsa eines Morgens aus unruhigen
ルス グゴーァ ムザ                      ンルーイゲン
Träumen erwachte, fand er sich in seinem Bett zu
イメン    エァヴァハテ   ファント
einem ungeheuren Ungeziefer verwandelt.
       ンゲホイレン     ンゲツィーファー フェァヴァンデルト
グレゴーア・ザムザが、ある朝、不安な夢から目覚めたとき、彼は自分がベッドのなかで、恐ろしい虫に変身しているのを見出した。


フランツ・カフカ
▲フランツ・カフカ

1.従属の接続詞は、副文を作る

 この課が扱うのは、英語の whenbecause などに相当する、「従属の接続詞」です。なぜわざわざこうした名称がついているかというと、文の作りが普通の文と変わってしまうからです。

 冒頭の文は、フランツ・カフカ(Franz Kafka: 1883-1924)の『変身(Die Verwandlung)』(1915)の有名な冒頭です。この文の前半部分、als から erwachte までが「副文」と呼ばれ、これは英語の従属節に当たります(fand 以下の部分は「主文」です)。そして、als が過去の「〜(した)とき」を意味する「従属の接続詞」です。

 注意してほしいのは、副文では定動詞(時制や人称変化などでかたちが定まった動詞)の erwachte が文末に位置していることです。ドイツ語の副文の最大の特徴は、定動詞が文末に位置することなのです。

 als で始まる文を、普通の文(平叙文)にすると、例えば次のようになります。

I II
Gregor Samsa erwachte eines Morgens aus unruhigen Träumen.
Eines Morgens erwachte Gregor Samsa aus unruhigen Träumen.
グレゴーア・ザムザはある朝、不安な夢から目覚めた。

 普通の文では、動詞が2番目の位置(Ⅱ)を占めるのが、ドイツ語の決まりですね。ところが、副文では、動詞が文末に位置するのです。

従属の接続詞 文末
als Gregor Samsa eines Morgens aus unruhigen Träumen erwachte

 ちなみに、ドイツ語で「副文」となるのは、こうした従属の接続詞で始まる文の他にも、間接疑問文や関係文(関係代名詞が導く文)があります。

 もうひとつ、英語との違いで注意すべき点は、副文の前後は基本的にコンマで区切ることです。冒頭の文でも、„Als ... erwachte, fand er ...“となっています。

 おまけにもうひとつ、冒頭の文でチェックしてほしいのは、主文での定動詞の位置です。副文が前に置かれると、副文全体が文のⅠの位置を占めたと考えます。したがって、続く主文中の動詞は2番目の位置(Ⅱ)をキープするために、動詞が倒置されて前に来るのです。次の文と比べると、理解しやすいかと思います。

I II
Bei dem Erwachen fand er sich ... verwandelt.
目覚めの際、彼は自らが…変身しているのを見出した。
Als er ... erwachte, fand er sich ... verwandelt.
彼が目覚めたとき、彼は自らが…変身しているのを見出した。

 これは、あくまで副文が主文の前にある場合です。もし冒頭の文が主文から始まっていれば、主文では普通にⅠ+Ⅱの順となります。

主文 副文
従属の接続詞 文末
Er fand sich ... verwandelt, als er ... erwachte.
彼は、目覚めたとき、自らが変身しているのを見出した。

2.副文での注意点 — 分離動詞や助動詞・完了形の場合など

 では、従属の接続詞が使われている文をいくつか紹介しながら、他の注意点にもふれていきます。

Ein Gott ist der Mensch, wenn er träumt,
               ンシュ    ヴェン     トイムト
ein Bettler, wenn er nachdenkt.
    トラー           ハ・デンクト
夢見るとき、人間は神であり、考えるとき、物乞いである。

フリードリヒ・ヘルダーリン
▲フリードリヒ・ヘルダーリン

 この文は、詩人フリードリヒ・ヘルダーリン(Friedrich Hölderlin: 1770-1843)が小説『ヒュペーリオン(Hyperion)』(1797/1799)に記した言葉です。人間のことが、ein Gott や ein Bettler と不定冠詞つきで表現されているのは、第5課で紹介したように、不定冠詞が性質や特徴を表して「〜のごとき存在」というニュアンスで使われているからです。

 さて、この文を引用した眼目は、最後の部分にあります。nachdenkt は、nachdenken「思いめぐらす」という分離動詞の変化形です。つまり、分離動詞が副文にある場合には、分離せずに1語で文末に位置するのです。

 次に、完了形や助動詞の文など、動詞要素が2つある場合を見てみましょう。例文は、グリム・メルヒェン「みっけ鳥(Der Fundevogel)」の最後の文です。

Und wenn sie nicht gestorben sind,
                  ゲシュァベン
so leben sie noch heute.
            ホ   イテ
そして彼らが死んでいなければ、彼らはまだ今日でも生きています。

 ちょっとふざけた文ですね。これはメルヒェンや昔話に見られる結末句の一種で、「ここでウソのお話はおしまい」というマーキングなのです。日本で言えば、例えば岩手の昔話が「どんどはれ」という定番の結末句で終わるのと同様です。なので、意味を深く追求する必要はありません。前半の副文は、もし接続詞なしの主文であれば、

I II 文末
Sie sind nicht gestorben.

と、完了を表す ist が文の2番目の位置(Ⅱ)にあり、過去分詞 gestorben は文末に位置しますね。しかし、副文では定動詞(時制や人称でかたちが定まった動詞)が文末に位置するので、ist が文末に置かれています。

 同様の例は、助動詞の文についても言えます。

Wir wissen,
    ヴィセン
dass Sie sehr gut Deutsch sprechen können.
                 イチュ    シュプヒェン ネン
あなたがとても上手にドイツ語を話せることを知っています。

 これも、副文ではなく、普通の文であれば、

I II 文末
Sie können nicht sprechen.

ですね。2番目の位置(Ⅱ)にある können が、副文になると文末に位置することになるわけです。

 さて、ここまでは動詞要素が2つの場合でしたが、動詞要素が3つ以上の場合、例えば助動詞の完了形などについては、ちょっと面倒な決まりがあるので、またいずれの機会に…。



練習

 次の文を日本語に訳してみましょう。

1. Ach, wie gut, dass niemand weiß,
                  ーマント
dass ich Rumpelstilzchen heiß'.
        ムペル・シュティルツヒェン
(Aus „Rumpelstilzchen“ von Brüdern Grimm)
【語句】ach: ああ wie gut: なんて素晴らしいんだ(感嘆の表現) dass: 〜ということ(従属の接続詞) niemand: 誰も〜ない weiß ← wissen: 知っている Rumpelstilzchen: 妖精の名前  heiß' = heiße ← heißen: 〜という名である

 

2. Es ist egal, ob ein Kind ein Buch liest,
      ガール
ein Audiobuch hört oder einen Film sieht.
Wichtig ist nur, dass Kinder mit Geschichten
ヴィヒティヒ                       ゲヒテン
groß werden. (Cornelia Funke)
【語句】egal:どうでもいい ob: 〜かどうか(従属の接続詞) das Kind: 子ども das Buch: 本 liest ← lesen: 読む das Audiobuch: オーディオブック(聞く本) hören: 聞く oder: あるいは der Film: 映画 sieht ← sehen: 見る wichtig: 重要な nur: ただ〜だけ Kinder: 子どもたち mit: 〜3とともに die Geschichte, -n: 物語 groß: 大きい werden: なる

 



まとめ

 代表的な従属の接続詞

dass 〜ということ wenn 〜ならば、〜(する)とき
ヴェ
weil 〜なので obwohl 〜にもかかわらず
ヴァイル オプヴォール
damit 〜するように als 〜(だった)とき
ルス
bevor 〜する前に nachdem 〜した後で
フォ ナハーム

 従属の接続詞で始まる「副文」では、定動詞(時制や人称が定まって変化した動詞)が文末に位置します。

 間接疑問文や関係文も副文なので、定動詞が文末に位置します。

 副文の前後は、原則としてコンマで区切ります。



ドイツ文化ひとこと フランツ・カフカ『変身』

カフカ『変身』(初版)
▲カフカ『変身』(初版)

 ある朝、虫に変身したグレゴーア・ザムザの話は、皆さんも読んだ、もしくは聞いたことがあるのではないでしょうか。ザムザは虫になった自分を不思議に思わず、当然のことのように受け入れています。それはまさしくメルヒェンの登場人物たちが、超自然的な出来事をそのまま受け入れるのと同じです。そしてこの話は、主人公が死んで家族がハッピーエンドを迎えるという、ねじれたメルヒェンとして見ることもできます。

 これは私の勝手な解釈なのですが、ザムザの変身はまだ途中であったように思えるのです。虫になった彼は、天井に這い上がったりして、重力からある程度自由になれる状態を楽しんでいます。この変身には、次なる段階として、空を飛ぶことができる形態、つまり重力から解放された形態への変身(脱皮?)があったのではないでしょうか。それは、仕事や家族(特に父親)といった人間的なしがらみからの解放でもあったはずです。

 しかし、父親に投げつけられたリンゴ(ニュートンのリンゴの如く重力の象徴!)が原因で、ザムザは死んでしまい、飛翔は叶いませんでした。古来ヨーロッパでは、文学にまつわるイメージのひとつとして、「文学は空を自由に飛翔する」というのがありました。ゲーテの「ハルツ冬の旅」(1789)という詩でも、「私の歌よ、空に浮かべ(Schwebe mein Lied)」と歌われています。つまり、ザムザの最終的な変身が叶わなかったことは、あるべき文学が完成しないことを暗示しているように読めなくもないのです。

 なお、この小説の映像化にあえて挑戦した作品として、ロシアのワレーリイ・フォーキン監督による『変身』(2002)があります。これは現在DVDで見ることができます。虫をあえて人間のままで表現したこの作品、かなり原作に忠実でありつつ、かつ独自の解釈も加えられた面白い映画ですので、お勧めします。

▲『変身』(2002)紹介動画



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第29課


矢羽々 崇(やはば・たかし) ■ 執筆者プロフィール

1962年岩手県盛岡市生まれ。ミュンヘン大学マギスター(修士)、上智大学博士(文学)取得。獨協大学外国語学部ドイツ語学科教授。専門は近現代ドイツ文学(主に叙情詩)。著書は、『「歓喜に寄せて」の物語――シラーの詩とベートーヴェンの「第九」』(2007年)ほか多数。2000~2002年度および2007年度に「ラジオドイツ語講座」講師、2008~2010年度「テレビでドイツ語」講師を担当。






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