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読んで味わう ドイツ語文法

36

関係文

Die Leute, die niemals Zeit haben,
tun am wenigsten.
時間がいつもない人たちは、ほとんど何もしない。


ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク
▲ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク

1.関係文

 冒頭の文の主語は die Leute「人々」で、これを先行詞として、関係文がコンマの後ろに続いています。die が関係代名詞で複数1格を表しています。関係文の動詞は haben で、Zeit haben で「暇・時間がある」という熟語です。niemals は「決して~ない」。tun は英語の do に相当する動詞で「する」を意味します。am wenigsten は第32課で扱った比較の表現で wenig「ほとんど~ない」の最上級です。

 先行詞があって、その後に関係代名詞で導かれる関係文があるというしくみは、英語もドイツ語も共通です。

 英語との違いで注意したい点は、次の4点です。4つもあるの!と嘆かないでください。むしろ英語の関係文よりも分かりやすいと思います。

1. 関係文は副文なので、定動詞(人称変化した動詞)は文末に位置します。
2. 関係代名詞は省略できず、必ず関係文のはじめに置かれます。(前置詞と一緒のときは、<前置詞+関係代名詞>のセットで)
3. 原則として前後をコンマで区切ります。
4. 関係代名詞は、現代ドイツ語では事実上1種類(次節を参照)で、これを人に対しても、モノに対しても使います。英語のような who は人だけ、which はモノだけという使い分けはありません。

2.関係代名詞の格変化

 関係代名詞の格変化は、指示代名詞の格変化とすっかり同じです。念のために、もう一度表を見てみましょう。

<関係代名詞の格変化>

 男 
 中 
 女 
 複 
1格
der
das
die
die
4格
den
das
die
die
3格
dem
dem
der
denen
2格
dessen
dessen
deren
deren

 関係文を読むとき、作るときに大切な点は2つで、これは慣れるまではけっこう面倒かもしれません。

1. 関係代名詞の性・数は、先行詞で決まる
2. 関係代名詞の格は、関係文中の役割で決まる

 冒頭の文を例にすると、die Leute が先行詞で複数です。そして、関係文のなかでこの言葉は、動詞 haben に対して主語の役割を果たすので1格です。つまり複数1格なので、関係代名詞は die となるわけです。

3.ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク

 冒頭の文は、18世紀ドイツの科学者であり、同時にドイツのアフォリズム(格言)を代表する作家であるゲオルク・クリストフ・リヒテンベルク(Georg Christoph Lichtenberg: 1742-1799)によるものです。科学者としても、そして格言家としても高く評価されていたリヒテンベルクは、哲学者カントや作家ゲーテなどとも文通していました。

 生前、「取引日記(Sudelbuch)」と名づけたノートに、本からの引用や学術関連のメモ、格言などを書きとめていました。彼の没後、ノートが発見され、印刷されて広く知られることになったのです。

 ドイツ語のウィットが効いた彼の格言は、残念ながら日本ではあまり知られていません。しかし、池内紀氏が『リヒテンベルク先生の控え帖』(平凡社ライブラリー)で紹介していますので、一読をお勧めします。

4.アメリカの発見

 リヒテンベルクの人間観察は、洞察に富んでいて、かつユーモアがあります。冒頭の文を読んでも、「そうだよねえ」と思わず頷いた人は多いのではないでしょうか。

 他にもいくつかリヒテンベルクの言葉を紹介しましょう。

Der Amerikaner, der den Kolumbus zuerst entdeckte,
    アメリーナー                   ツァスト エントクテ
machte eine böse Entdeckung.
           ーゼ エントクング
コロンブスを最初に発見したアメリカ人は、悪い発見をしたのだ。

 先行詞は男性名詞の der Amerikaner で、その彼がコロンブスを発見するので、主語の1格の関係代名詞 der が関係文のはじめに置かれています。コロンブスのほうが4格目的語であることを明示するためにも den Kolumbus とわざわざ den を付けて書かれています。関係文の動詞は entdeckte(< entdecken「発見する」)です。

「アメリカはコロンブスによって発見された」なる例文を、受動の例として使ったりしますが(私も使ったことあり)、「発見」なるもの言いは、明らかに西欧中心の発想でしかありません。すでに住んでいたアメリカのもともとの住民たちにとって、コロンブスやその後継者たちの到来は、「悪い(böse)」ものでしかなかったはずです。これを20世紀後半以降の人間が指摘するのは簡単ですが、18世紀にすでにこうした発言がなされていたことに驚くばかりです。

5.発禁本について

 次もリヒテンベルクの言葉です。

Das Buch, das in der Welt am ersten verboten zu
                               フェアーテン
werden verdiente, wäre ein Katalogus von verbotenen
       フェァディーンテ ヴェーレ   カターグス
Büchern.
ビューヒャーン
世界でまずもって禁止されるに値するであろう本があるとすれば、それは禁止された本たちのカタログであろう。

 文法的には難しい文です。まず文全体が後の第40課で扱う接続法第2式、英語でいえば仮定法過去で書かれています。主語は中性名詞の das Buch で、「こうした本があれば」という仮定を含んでいます。帰結となるのが、「カタログであろう」で、wäre が動詞 sein の接続法第2式のかたちです。

 関係文がいわば仮定の内実で、verdienen「~に値する」という動詞の接続法第2式が verdiente です。das は先行詞 das Buch を受けて、かつ関係文で「本」は主語なので、中性1格のかたちです。am ersten は、現代ドイツ語であれば、am ehesten「もっとも早く、即刻」と言うでしょう。verboten zu werden「禁止される」は verbieten「禁止する」の受動での zu不定句です。

 発禁となった本、あるいは焚書となった本が逆に有名となるというイロニー(die Ironie)は、例えばゲーテの『若きウェルテルの悩み』(1774)や近くはナチスによる焚書(1933年)も証明しているところです。そうした本をまとめた目録こそ、人々の関心をもっとも惹くに違いない。リヒテンベルクの着眼には恐れ入ります。

v
▲ナチスによる焚書

 最後に、リヒテンベルクに関するゲーテの言葉を紹介して、この課を終えます。

私たちはリヒテンベルクの著作を、もっとも不思議な魔法の杖として使える。彼がジョークを言っているところに、問題が隠されているのだ。

 



練習

 次のリヒテンベルクの文を読んでみましょう。訳を見ながらでかまいません。

1. Eine seltsamere Ware als Bücher gibt es wohl schwerlich in der Welt. Von Leuten gedruckt, die sie nicht verstehen; von Leuten verkauft, die sie nicht verstehen; gebunden, rezensiert und gelesen von Leuten, die sie nicht verstehen; und nun gar geschrieben von Leuten, die sie nicht verstehen.
【語句】seltsam: 奇妙な(ここではseltsamerと比較級) die Ware: モノ、商品 als: ~より die Bücher: 本たち(← das Buch「本」の複数形) es gibt + 4格: ~がある wohl: おそらく schwerlich: 困難な die Welt: 世界 von: ~によって die Leute: 人々 gedruckt: 印刷される(← drucken:「印刷する」の過去分詞) sie = die Bücher vertehen: 理解する verkauft: 売られる(← verkaufen「売る」の過去分詞) gebunden: 製本される(← binden「製本する」の過去分詞) rezensiert: 書評される(← rezensieren「書評する」の過去分詞) gelesen: 読まれる(← lesen「読む」の過去分詞) nun: 今や gar: それどころか geschrieben: 書かれる(← schreiben「書く」の過去分詞)

 



まとめ

 関係代名詞は、指示代名詞と同じ格変化をします。

 関係代名詞の性・数は先行詞から、格は関係文中の役割から決まります。



*1 By UnspecifiedUnspecified [CC0], via Wikimedia Commons

第35課
第37課


矢羽々 崇(やはば・たかし) ■ 執筆者プロフィール

1962年岩手県盛岡市生まれ。ミュンヘン大学マギスター(修士)、上智大学博士(文学)取得。獨協大学外国語学部ドイツ語学科教授。専門は近現代ドイツ文学(主に叙情詩)。著書は、『「歓喜に寄せて」の物語――シラーの詩とベートーヴェンの「第九」』(2007年)ほか多数。2000~2002年度および2007年度に「ラジオドイツ語講座」講師、2008~2010年度「テレビでドイツ語」講師を担当。






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