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『英文解釈教室』ノート
28


Chapter 13 比較の特殊問題 ② no more … than, etc.

 

 

13.2.1

 

 

* ポイント *

公式「B に負けず劣らず A」

語釈: なし
検討:

○ no less A than B:

「(S) は B より A が少ない事がまるでない」同等性を、肯定的に捉えている
→「(S) は B に比べ A が同じぐらい多い
→「(S) は B に劣らず A」

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

13.2.2

 

 

* ポイント *

主語に譲歩の気持が入る

語釈:

lowly: 低級な
organism: 生物
miraculous: 超自然的な

検討:

○ The most lowly organism:

「最も下等な生物にも」と譲歩で訳したくなるのは何故か。

常識的に「高等生物には超自然的な力がある」との前提があり、また no less than により両者が肯定的に捉えられていると読めるから。

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

13.2.3

 

 

* ポイント *

二つの and の違い

語釈:

moral character: 徳性、品性
cherish: 大事に育てる
encourage: 促進する

検討:

○ moral character and good health:

moral character、good health、ability の三つが共に大事だ、といっている。

他のものは考慮に入れていないので、moral character と good health を「… や」で結ぶのはよくない。翻訳としては語調リズムも大切なので、この三つは出来れば訳語の長さが同じ方がよい。

訳例:

品性と健康も才能と同様に大切に育まれねばならない。

さらに一歩:

○ cherished and encouraged:

英語は一語で言えることを二語にしてリズムを出すのを好む。ここも広い意味での同義語反復。「大事に育て、促進する」は逆に日本語ではもたもたする。「育まれる」一語で済むだろう。

 

13.2.4

 

 

* ポイント *

公式「他ならぬ …」

語釈: なし
検討:

○ no less A than B:

A には「人」が、B には「官職、地位」がくる。

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

13.2.5

 

 

* ポイント *

言葉の省略

語釈:

quality: 資質

検討:

○ not less A than B:

「B よりも少なくなく A」(A ≧ B)
→「B と同じかそれ以上に A」
→「B に勝るとも劣らず A」

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

13.2.6

 

 

* ポイント *

as 以下に否定的材料がきている

語釈:

discourage: 思いとどまらせる
about: およそ

検討:

○ … , and :

この and は「そして」ではない。強い順接「それで」「だから」

訳例: 略
さらに一歩:

○ any attempt to discourage them:

discourage は「勇気をくじく」(dis- 奪う、courage 勇気)から、意味が広がった。(1) 自信を失わせる (2) 落胆させる (3) 思いとどまらせる、のうちここでは (3)。

 

13.2.7

 

 

* ポイント *

文と文の比較

語釈: なし
検討:

○ no more A than B:

クジラの公式(A whale is no more a fish than a horse is (a fish). 「クジラが魚でないのは馬が魚でないのと同じ」)で知られる両者否定の構文(「A でないのは B でないのと同じ」)ここではそれに merely 以下の条件が加わっている。

だが 100%これが通用するとは限らない。ごくたまに、not more 〜 than の強調形と読める場合もある。

例: Clay is no more expensive to use than any other drainage material.
粘土は他のどの排水施設用の材料と比べても、決して高くつくことはない。

訳例: 略
さらに一歩:

○ … , merely by:

merely の前のカンマが、merely 以下が文全体に掛かるしるしとなっている。

「… だけ」にするか「… だけでは」にするかは、訳文に強調の力点を置きたいかどうかの日本語の問題。

 

13.2.8

 

 

* ポイント *

than 以下の S V の省略

語釈: なし
検討: なし
訳例: 略
さらに一歩:

○ if he had stood still.:

この stood > stand は「立つ」の意味が薄れ、be に近くなる(「じっとしていた場合に」)。

 

13.2.9

 

 

* ポイント *

in nature の解釈

語釈: なし
検討:

○ in nature:

(1) 自然の中で (2) 自然界で (3) 本質的に (4) 一体全体 (5) 全く以て (6) 実際に、のうちどれがいいだろう。歴史と比較しているのだから、 (2) がよいと思う。

訳例:

歴史の中で事態が突然、準備もなく起こるものでないのは、自然界の場合と同様である。

さらに一歩: なし

 

13.2.10

 

 

* ポイント *

公式 no more than=only

語釈:

ban: 禁止
treaty: 条約

検討:

○ general and complete:

general を「一般的」と読むのは、「専門的」との対比の場合。ここは「部分的」に対応するのだから「全面的」の訳語が得られる。

訳例:

核実験禁止条約は、全面的な完全軍縮への最初の歩みにすぎない。

さらに一歩:

○ She is not more beautiful than her mother.:

言い換え =She is not so beautiful as her mother.

 

13.2.11

 

 

* ポイント *

和語にする

語釈:

eventful: 事件の多い

検討:

○ Contrary to popular belief:

「一般の通念に比し」とも訳せるが、硬い。和語にして「普通に考えられているのと違って」のようにするのがよいだろう。

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

13.2.12

 

 

* ポイント *

公式の例外

語釈:

the feudal lords: 封建領主

検討:

① Church:

語頭の大文字は固有名詞化。ここは (1) 宗教改革以前のキリスト教会 (2) ローマ・カトリック教会 (3) (集合的)キリスト教徒 (4) (集合的)キリスト教世界、のうち (1)。

② no more corrupt than the feudal lords:

than 以下の「封建領主」は「腐敗していた」と考えられるので、クジラの公式はあてはまらない。not more than の強調形と読む。

訳例: 略
さらに一歩:

○ than the feudal lords:

クジラの公式が成り立つのは、than 以下が否定材料であること。ここのように肯定材料(腐敗していた)と読める場合は、「封建領以上に corrupt では全然ない」とする。

 

13.2.13

 

 

* ポイント *

no more A than B の変形

語釈:

on the ground that: … という点から

検討:

○ than if you choose them for your commercial reasons:

than 以下を否定材料と考えれば「商売上の理由で選んだ場合と同じく、真の友情から遠い」。

than 以下を肯定材料と考えれば「商売上の理由で選んだ以上に真の友情に近いわけではない」。

訳例: 略
さらに一歩:

○ virtuous company:

訳としては「有徳な友」でよいが、厳密にはこの company は集合名詞で抽象的「仲間づきあい」または「仲間づきあいの相手」。

 

13.2.14

 

 

* ポイント *

両性具有の more

語釈: なし
検討:

○ more:

この more は、「彼はより多くのことをした」(more は done の目的語)、「解決を見出すより多くのこと」(more は find 以下の主語)の二つの顔をもつ。

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

13.2.15

 

 

* ポイント *

公式「… するしかない」

語釈:

can never do better than : … するのが一番よい

検討:

○ do better than 〜:

「〜 よりよりよく行う」それと can never(決してあり得ない)が合わさり「…するしかない」「… するのが一番だ」の定訳となる。

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

13.2.16

 

 

* ポイント *

other に二面性

語釈:

can not do other than: … するしかない

検討:

○ other than:

than の前後で other は「他のことはでき得ない」「彼を無視すること」の二つに意味に、いわば身を割かれている。

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

13.2 例題(1)

 

 

* ポイント *

比喩の理解

語釈:

free from: … のない
rose: 昇進する
thrust: 押しつける
naturally: 生来
creative: 創造的な
help: 避ける
cf. cannot help 〜ing 〜 せざるを得ない
conspicuous: 人目を惹く
sovereign: ソブリン金貨

検討: なし
訳例: 略
さらに一歩: なし

 

13.2 例題(2)

 

 

* ポイント *

比喩を正しく理解する

語釈:

consistent with: … に一致する
advance: 提出する
follow: 次に来る
nearly: ほぼ
correct: 妥当な
sensible: 賢明な

検討:

① simple and direct:

これも同義語反復。日本語でもこれに似た同義語反復がある。「直截簡明」「単刀直入」。

② a recent writer:

一種の転移修辞。recent は形では writer に掛かっているが、意味は writer の状況、具体的には行為の時間を指す。「最近ある物書きが」。

訳例:

この nearly は「ほぼ」「概ね」、correct は「妥当な」「適切な」。nearly correct を「真実に近い」とすると、「では真実でないのか」と思われてしまう。「より相応しい」としてはどうか。

さらに一歩:

① where:

前も出たが、ここでは接続詞 =in the place in which。

cf. =in which 関係副詞
=the place in which 先行詞つき関係副詞

② to choose:

to は方向を示し、時間的方向 → これから先 → 未来の仮定を指すことが多い。ここもそうで、would と呼応し、仮定(… するとしたら)の意味になる。travelling に対応。

 

 

〈著者紹介〉

柴田 耕太郎(しばた こうたろう)

 早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒。
 岩波書店勤務、フランス留学を経、大手劇団文芸部所属など演劇活動。
 翻訳業界で約40年。(株)DHC 取締役、(株)アイディ代表取締役を経、現在翻訳教育家。
 獨協大学外国語学部・東京女子大学非常勤講師。
 『英文翻訳テクニック』(ちくま新書)など著訳書十数冊。
 演劇・映像・出版・産業各分野で実績のある翻訳実践者。
 翻訳ベンチャー(株)アイディを自社ビルを有する中堅企業に育てた翻訳経営者。
 出版翻訳者を40人以上デビューさせた翻訳教育者。
 アイディ『英文教室』主宰。

 


 

 

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