過去の連載

私の語学スタイル

第 6 回
インドで見つけた、幸せのかたち

006

Style1
通じないにもほどがある!

 サンジェイさんとの運命的な出会いを果たしたものの、当時は「決してまともな言葉の交換ができていた訳ではなかった」という。久田さんのヒンディー語は片言だったし、ふたりとも英語が完璧だったわけではない。もちろんサンジェイさんも、日本語はできない。しかし、言葉を超えるなにかを感じたのだという。
とはいえ、現実問題としてヒンディー語は必須だ。サンジェイさんの家族は、皆ヒンディー語しかしゃべらないのだ。
「ヒンディー語は、インドのお母さんから学びました。お母さんの言っていることを全部まねて、耳で覚えて。というのも、お母さんの使うヒンディー語は、本に載っているものとまったく違うんですよ。本のまま言っても、全然通じない」
実は、バラナシでは、ヒンディー語のなかでもボジプリ語*という方言を使うのだという。
「最初はもう、なにがなんだかわからなかったんですけど、だんだん単語の切れ目がわかってくるんですよ。あ、じゃあこの単語を入れかえたら、こういう意味だな、と」
インドのお母さんから丸覚えしたヒンディー語は、日本語でいうところの「大阪のおばちゃん」のような話し方らしい。だから、よく笑われるのだという。でも、そのことを、久田さんは誇りに思っているそうだ。

 

*ボジプリ語 (Bhojpuri) インド北部、北東部などで話されている言葉。ヒンディー語の方言のひとつだとする説と、独立した言語だとする説がある。

Style2
コミュニティーに生きる、ということ

 5年ほど前にサンジェイさんと結婚した久田さんだが、メグカフェをオープンしたのは2006年秋のこと。結婚前のちょっとした会話で「いつか自分のお店をもちたい」ということは言っていたものの、具体的ではなかった。
 メグカフェの話が具体的になったのは、たまたまよい物件が見つかったのがきっかけだったという。

 その後、オープンから約半年で『地球の歩き方』にお店の情報が掲載されるなど、まさにとんとん拍子でここまで来た。
 メグカフェがこのようにうまくいっている大きな理由として、地元コミュニティーとの関わりがある、と久田さんは言う。
 「外国でなにをするにしても、その場所をわかっていないとだめだし、やっぱりそこを愛せないとだめですよね。突然よそ者が来て、ぱっとお店を開いたぐらいでは、ねたみも買うし、雰囲気も良くない。嫌がらせをうけたり、なかなか難しい」
 メグカフェをオープンしたのは、久田さんがインドに住みはじめて3年目。ヒンディー語で周囲とコミュニケーションがとれるようになっていた。また、サンジェイさんのお父さんが経営するお店も近くにあり、周りの人みんなが知り合いのような環境だった。それが「店がうまくいっているいちばんの理由」だと語る。
 インドという土地柄、出せるメニューにも制限がある。インドでは牛は神聖な生き物だし、豚は不浄であるという理由で、ほとんど食べられることがない。
 「私たちはコミュニティーのなかで生きているので、それは絶対に無視してはいけないこと」 メニューの幅が制限されようと、鶏か野菜、と割り切っているのだそうだ。

  • 前へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
  • 次へ
 

関連紹介

  •  

    ■メグカフェ 

    (MEGU CAFE)

     


    住所:

    D8/1, Kalika Gali, Varanasi UP India

     

    電話:

    +91−9236519262


    アクセス:

    ヴィシュワナート・ガーリーを入って徒歩 5 分。看板のあるところを右にまがり、道なりに行って右手側


    営業時間:

    10時〜22時
    日曜日定休

 
 

▲ページトップに戻る