書籍検索

フィンランド語質問箱

▼質問は投稿するボタンを押してください(投稿フォーム画面が表示されます。)

 
質問

3 人称の所有接尾辞の形について。

『フィンランド語のすすめ』 第 29 課で、動作主分詞を使って関係節を書き換えたとき、動作主分詞の主語が文全体の主語と同じときは、それを所有接尾辞で表すと習いました。ですから、たとえば He puhuvat kirjasta, jonka he ovat lukeneet.(彼らは自分たちが読んだ本のことについて話している) なら、動作主分詞の主語を 3 人称複数の所有接尾辞 -nsa で表して、He puhuvat lukemastansa kirjasta. という文になると思います。ところが、-nsa の代わりに -an を用いた He puhuvat lukemastaan kirjasta. という文もあるようです。この -an は入格({中へ}格)の語尾にも見えますが、どういう意味なのでしょうか。


 
回答

まず、lukemastaan の -an は入格({中へ}格)の語尾ではありません。これは 3 人称複数の所有接尾辞です。したがって、lukemastaan も、lukemastansa と同様、動詞 lukea (読む) の動作主分詞 lukema の単数出格({中から}格)形 lukemasta に、3 人称複数の所有接尾辞が付いた形です。このように、3 人称複数の所有接尾辞には、-nsa という形のほかに「先行する母音+n」という形もあります。lukemasta の場合は、先行する母音が -a なので、-an が所有接尾辞ということになります。「先行する母音+n」という形には、当然、所有接尾辞をつけようとしている単語の最後が母音でないと使えないという制約があり、一方、-nsa の方はいつでも使えるわけですが、両方使える場合には、「先行する母音+n」の方が多用される傾向にあります。したがって、lukemastansa と lukemastaan の場合も、後者の方が一般的です。なお、所有接尾辞については、『初級編』 100 ページも参照してください。


 
質問

Lippu maksaa euron. について。

『フィンランド語のすすめ 初級編』 50 ページの下から 6 行目の上記例文について、次のように質問します。

1) この文の maksaa は自動詞ですが、フィンランド語文法ではこのような主格補語も「目的語」と見なしているのですね。

2) 「私は 1 ユーロ払う」という他動詞の場合も、Minä maksan euron. でよろしいでしょうか。

3) 逆にMinulla on euron. は間違いで、yksi euro と言わなければいけないのでしょうね。

4) そうすると「1」以外の場合は主語であろうと目的語であろうと kaksi euroa になりますか。

 


 
回答

1) まず maksaa が他動詞かどうかという点ですが、2)に挙げておられる Minä maksan euron. の maksaa だけでなく、Lippu maksaa euron. の maksaaも、フィンランド語の文法では他動詞と見なされています。日本語には、maksaa のこの用法と直接対応する動詞がないため、わかりにくいのですが、Lippu maksaa euron. は、いわば、「切符を購入することが 1 ユーロの支払いを生じさせる」という意味なので、euron は主格補語ではなく、目的語ということになります。

2) 「支払う」という意味の maksaa の目的語は、それが単数可算名詞であれば、文が否定文でない限り、単数属格形で表されます。たとえば、「請求 (lasku)」や「罰金 (sakko)」を支払う場合、それが 1 件なら、それぞれ、Minä maksan laskun. や Minä maksan sakon. のように表されます。目的語が金額の場合も、1 ユーロのように、1○○(○○は通貨単位)の場合は、やはり単数属格で euron のように表されます。なお、「ユーロ」の前に「1」をつけると、「1」も属格になって、yhden euron となりますが、yhden は省略可能です。

3) Minulla on euro. のような所有文では、単数可算名詞は単数主格形で表されます。したがって、それが金額の場合も単数主格形になり、「ユーロ」なら、euron ではなく euro になります。なお、この場合も、「ユーロ」の前に「1」をつけると、「1」は「ユーロ」と同じ格になるので、yksi euro となります。

4) 「○○ユーロ」の前の数詞○○が 1 でない場合は、「○○ユーロ」が主語の場合も、目的語の場合も、また、「私は○○ユーロ持っている」のように所有文の場合も、数詞○○は単数主格形、ユーロは単数分格形で表されます。たとえば、「2 ユーロ」なら、Kaksi euroa riittää.(「2 ユーロで十分だ」、この場合の「2 ユーロ」は主語) Lippu maksaa kaksi euroa. Minä maksan kaksi euroa. Minulla on kaksi euroa. といった具合です。


 
質問

kiosk(e)ista か kiosk(e)ilta か?

『フィンランド語のすすめ 初級編』47ページの 「新聞はどこで買えますか?」 「Mistä voi ostaa sanomalehtiä?」の答えで、「Niitä voi ostaa kirjakaupoista ja kioskeista. 」 の kioskeista は kioski → 語尾の i → e に変化して +sta だからなのでしょうか? 私はフィンランドで習っていますが、kioski は + lta で kioskilta と習いました。kioski は今では立派にお店の一つですが、昔は露店のようで屋根もなかったからだ(今の tori と同じ)と先生は言っていました。それとも 「Mistä voi ostaa sanomalehtiä?」 とこの質問が Mistä だから Lケースでも sta で答えるのですか?


 
回答

まず、Mistä? だからといって、-sta/-stä の格で答えなければいけないということはありません。場所を表わす名詞の語法によって、-sta/-stä になることもあれば、-lta/-ltä になることもあります。 -sta/-stä の格と-lta/-ltä の格は、それぞれ使われる場合が決まっていますが、中にはどちらも許容される場合があります。ご質問の kioski もその例です。kiosk(e)ista という形も kiosk(e)ilta という形も、同じ文脈で実際に使われることがあるので、どちらかが間違いと言い切ることはできません。ただし、どちらかというと、kiosk(e) ista の方が多いようです。 言葉は常に変化しています。習われている先生の説明も間違いというわけではありませんが、ある語の語法に関して、現にある変化が起こっているような場合、過渡的に2つの形が共に使われるという事態が起こり得ます。


 
質問

Olen huolissani opinnoistani. の huolissani に所有接尾辞がついているのはなぜ?

『フィンランド語のすすめ 初級編』第8課(70ページ)の最初の文で huolissani と所有接尾辞がついてますが、なぜこの語に所有接尾辞がつくのかわかりません。教えて下さい。


 
回答

この表現では、動詞である olen も1人称単数の形ですし、huolissani も1人称単数の所有接尾辞 -ni が付いています。「心配している」のが「私」であることは動詞の形から明らかなので、huolissa に所有接尾辞を付けるのは、余計な感じもしないではありません。しかし、実はフィンランド語には似たような表現がたくさんあります。こうした表現は、決まったものとして覚えるしかありません。olen pahoillani 「すみません」、olen tosissani 「本気だ」、olen raivoissani+{中から}格 「{中から}格に怒っている」、olen harmissani+{中から}格 「{中から}格に悩まされている」なども同様の表現です。なお、これらの表現で使われる所有接尾辞は主語の人称・数と一致するので、例えば、「心配している」のが「私」でなく「彼(女)」なら、h&amul;n on huolissaan+{中から}格になりますし、「私たち」なら、olemme huolissamme+{中から}格となります。3人称の所有接尾辞については、『フィンランド語のすすめ 初級編』100ページを参照してください。

*これに関連して、72ページの「覚えましょう」の最初にある「olen huolissaani+{中から}格」は、「olen huolissani+{中から}格」の誤りです。申し訳ありません。お詫びして訂正いたします。


 
質問

Pelkään, että en ymmärtäisi luentoya. の ymmärtäisi はどういう形?

フィンランド語のすすめ 初級編』第8課(70ページ)の上記の文(文2)で ymmärtäisi とありますが、これはどういう形なのですか? 教えて下さい。


 
回答

上記の文で en ymmärtäisi とあるのは、動詞 ymmärtää 「理解する」の条件法で、1人称単数の否定の形です。条件法については『フィンランド語のすすめ初級編』137-138ページを参照してください。この文では、条件法が、「理解できないかも(しれない)」の「かも」の部分を表わしています。条件法を使わなければ、動詞は en ymmärrä という形になります。en ymmärtä でなく en ymmärrä になるのは、階程交替という現象が絡んでいるためで、この現象については『フィンランド語のすすめ 初級編』113ページを参照してください。


 
質問

… on sinulle sopiva は … on sopiva sinulle とすることも可能か?

『フィンランド語のすすめ 初級編』第8課(70ページ)の5の文で … on sinulle sopiva とありますが、… on sopiva sinulle でもよいのでしょうか?


 
回答

上記の文で … on sinulle sopiva とありますが、語順を入れ替えて … on sopiva sinulle とすることも可能です。そもそもフィンランド語では、英語ほど語順が厳格に決まっているわけではありません。とはいえ、より好まれる語順というものがあるのも確かです。より好まれる語順は、問題の語の意味や、その語が文中で果たす文法的な役割、あるいは文脈など様々な要因によって決まります。この文の場合、文脈から、「問題のコースがふさわしいのは誰か」という情報、つまり sinulle よりも、「問題のコースが相手にとってどんなものなのか」という情報、つまり sopiva の方がより重要だと考えられます。一般に、特別な強調やイントネーションを伴わない限り、より重要な情報ほど後ろに置かれる傾向があるため、どちらかといえば、… on sinulle sopiva の方が好まれることになります。


 
質問

寒暖を表わす文の形容詞は主格それとも分格?

『フィンランド語のすすめ 初級編』第7課の応用編2(68ページ)で、Ulkona on pimeää. と形容詞が分格になっています。またその次の文では、Ulkona on kylmä. と主格になってます。どのように使い分けたらいいのでしょうか?


 
回答

フィンランド語には英語の it のような形式主語がないので、寒暖を表わす文には主語がなく、「On+寒暖を表わす形容詞」という形で表わします。ただし、動詞 on の前に、täällä「ここ」、tänään「今日」、ulkona「外」などを持ってくることも可能です。さて、それでは、補語となる寒暖を表わす形容詞は、主格と分格のどちらで表わされるのでしょうか。これは難しい問題で、実例を見ると、主格の方が多いものの、分格も使われています。Ulkona on kylmä. や第7課の本文にある Mutta on vähän kylmä. では、ネイティブスピーカーの判断に基づいて、形容詞「寒い」を主格形の kylmä にしていますが、これを分格形の kylmää にしたとしても、間違いとは言い切れないでしょう。形容詞が pimeä「暗い」のように明暗を表わす場合は、逆に分格の方が多いのですが、主格も実際に使われています。寒暖を表わす形容詞を主格で表わすか分格で表わすかで、微妙な違いがあるのかもしれませんが、ネイティブスピーカーでもそのあたりの違いはうまく説明できないようです。


 
質問

『フィンランド語のすすめ 初級編』第6課 49ページの16行目の Luontopolkua seuraten voi tutustua luontoon. の seuraten とは、動詞 seurata のどういう形なのでしょうか。


 
回答

seurata「たどる」の第2不定詞具格形という形です。「第2不定詞」「具格」も『初級編』では出てきません。まず、「第2不定詞」の方ですが、第3不定詞があるからには、第2不定詞もあるはずで、実際、第1不定詞の末尾の -a/-ä を -e に変えると第2不定詞を作ることができます。しかし、第2不定詞はそのままの形で使うことはできず、必ず -e の後に格語尾を付けなければなりません。第2不定詞に付く格語尾には、{中で}格と具格の2つがあります。それでは、「具格」とはどういう格なのでしょうか。この格はもともと道具を表わす格でしたが、名詞・形容詞の格として用いる場合、現在ではpaljain jaloin 「裸足で」、kaikin voimin「全力で」のような決まった表現でしか使われません。具格の語尾は -n です。-n というと単数属格の語尾と同じですが、具格には単数形がないので、属格と同じ形になることはありません。さて、この語尾 -n を第2不定詞に付けると第2不定詞具格形のできあがりです。文法的には少し厄介な形かもしれませんが、「…しながら」という意味になり、結構よく使われる形です。Luontopolkua seuraten の場合は、直訳すれば「自然歩道をたどりながら」という意味になります。第2不定詞具格形は、toisin sanoen「言い換えれば」のような熟語的な表現でもよく使われます。なお、「第2不定詞」、「具格」は、共に『中級編』の第29課に出ています。


 
質問

avata の目的語の格は属格それとも主格?

『フィンランド語のすすめ 初級編』の140ページの練習1(14)の "窓を開けてくださいますか?" という問題の答えが "Avaisitko ikkunan" とikkuna が属格になっているのはなぜですか? avata を辞書でひきましたが"〜を開ける"というときに属格になるというようなことは書いておらず、"地図を開けて!" という例文では Avaa kartta! と kartta は主格のままです。どちらも正しいということでしょうか?ニュアンスが違ってきたりするんでしょうか?


 
回答

フィンランド語では、人称代名詞を除いて、単数形の目的語は属格か分格で表示されるのが原則です。しかし、命令文や義務を表わす構文、不定人称受動文など特定の構文では、属格の代わりに主格形が使われます。Avaa kartta!「地図を開いて!」は命令文で、目的語の kartta「地図」が主格形になっているのはそのためです(76ページを参照してください)。主格形は属格の代わりに使われているわけですから、命令文など特定の構文でなければ、属格で表示しなければなりません。Avaisitko ikkunan? 「窓を開けてくださいますか」は、命令文など、目的語を主格形で表示しなければならない構文ではないので、目的語の ikkuna「窓」が、ikkunan と属格形になっているのです。 なお、辞書でavataの項を引くと、open (a window ikkuna) のように書いてあって、ikkuna が主格形で載っていますが、これは、avata がikkuna「窓」という名詞を目的語に取るということを言っているだけで、目的語の「窓」がいつでも主格形になるというわけではありません。一方、 rakastaa「愛する」を引いてみると、love (music musiikkia) のように、目的語の musiikki「音楽」が musiikkia という分格形で挙がっています。このような場合、目的語の「音楽」は必ず分格形になります。


 
質問

hymy と hymyily の正しい発音の仕方は?


 
回答

hymy と hymyily の発音を仮にカタカナで書くとすると、それぞれ「ヒュミュ」「ヒュミュイリュ」になります。それでは、日本語と同じように「ヒュ」「ミュ」「リュ」と発音すればいいかというとそうではありません。日本語の「ヒュ」「ミュ」を実際に発音してみると、唇が丸まっていないことがわかると思います。一方、フィンランド語の発音は唇が丸まります。ですから、練習としては、「ヒュ」「ミュ」と発音しながら、舌はそのままの位置で保ち、唇だけを次第に丸めてみてください。唇を尖らすくらいに意識して練習しているうちに、フィンランド語の hy- や my- の発音らしくなると思います。同じことは ly- にも言えるのですが、ly- の場合は、子音[l]の発音にも注意が必要です。日本語には[l]と[r]の区別がないので、「リュ」と発音するときも、子音部分は[l]に近かったり [r]に近かったりしますが、フィンランド語では[l]と[r]は違う音なので、ly- を発音するときも、まず最初に舌の先を歯茎の裏にしっかりつけてから発音してください。母音部分の発音は hy- や my- の場合と同じです。唇の丸めを忘れないようにしてください。


 
質問

Yleisöllä, joka katsoi elokuvaa, oli hauskaa. のYleisölläはなぜ{所で}格形か?


 
回答

この文(『フィンランド語のすすめ 中級編』137ページ)は関係節を取り除くと、Yleisöllä oli hauskaa. となりますが、この文は一種の所有文になっています。もちろん、所有文は、基本的には「誰々が何々を持っている」という意味を表わすのですが、{所で}格で表わされた名詞がどのような身体的な状態にあるかということも表わせます。この用法は、第28課の150‐151ページで解説していますので、そちらを参照してください。お尋ねのhauskaaの場合、身体的な状態とは言いかねますが、身体的な状態を表わす用法をさらに応用した言い方で、{所で}格+ oli (hyvin) hauskaaで、「(とても)楽しい時を過ごした」という意味の決まった言い方だと考えてください。


 
質問

存在文「場所 A には B がある」と所有文「 A は B を持っている」で B のとる形は?

『フィンランド語のすすめ 初級編』第7課の解説 2&3(61ページ)に関連した質問です。B が不可算名詞であるかもしくは否定文の場合、Bは単数分格を取るまでは分かりました。通常(つまりB が可算名詞の場合)はBはノミナティーヴィ(基本形)ですよね?では、Bが複数分格を取る場合というのはあるのでしょうか。もしある場合はどのような時ですか?


 
回答

存在文「場所AにはBがある」と所有文「AはBを持っている」のBは同じように表されます。どういう形で表されるかは、Bが可算名詞かどうか、可算名詞の場合は単数かどうか、そして文が否定文かどうかで決まります。この三つの条件の組み合わせは次の通りです。

1)B:可算名詞で単数、文:否定文でない
→ Bは単数主格
2)B:可算名詞で単数、文:否定文
→ Bは単数分格
3)B:可算名詞で複数、文:否定文でない
→ Bは複数分格
4)B:可算名詞で複数、文:否定文
→ Bは複数分格
5)B:不可算名詞、文:否定文でない
→ Bは単数分格
6)B:不可算名詞、文:否定文
→ Bは単数分格

ご質問いただいた「Bが複数分格」を取るケースは、上の3と4の場合ということになります。第12課の124, 5ページでまとめてありますので、そちらも参照してください。


 

▲ページトップに戻る