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ネイティブの限界

ネイティブの限界

カテゴリ : 
くもの舌 (言葉について気が付いたこと、考えたこと)
執筆 : 
Tom Gally  投稿日 2009-10-30 21:10
大学の授業で使っている教材に、次のような文がある。
John Smith is well known for his research that attempts to explain the relationship between gismos and gadgets.(ジョン・スミスは、「何とかいうもの」と「呼び方がわからないやつ」との関係を説明しようとする研究でよく知られている。)
この文を口頭で読み上げたときに何となく ...is well known for his research that... の部分に引っ掛かってしまった。これは不自然と感じたが、どこが不自然か、特定できなかった。最初は ...is known for his research... のほうが普通だと思って、ウェブで検索したが、そうでなないと分かった。グーグルビングでの検索結果は、下記のとおりだ。
"is known for his research" 845,000件(グーグル), 267,000,000件(ビング)
"is well known for his research" 4,000,000件(グーグル),266,000,000件(ビング

グーグルとビングの間で件数がこんなに違うのは、たぶん「件」、即ちウェブページの数え方の違いによるだろう。いずれにしても、実際の用例を見ると、"is known for his research" も "is well known for his research" も立派な文脈で使われているので、両方とも「自然な英語だ」と言わざるをえない。

元の文の「不自然さ」を突き止めるために、今度は research の後の「that節」に着目した。同じサーチエンジンで research on と比較したら、次の結果が出た。
"is well known for his research that"  7件(グーグルとビング)
"is well known for his research on"  2,110,000件(グーグル), 52,500,000件(ビング)
この結果を見ると、不自然さは ...for his research that... に由来すると分かる。"conducted research that" や "reported research that" はグーグルで数十万件があるので「research + that節」という構文は問題ないが、research の前に所有形の名詞を使うと、件数がぐんと減る。これは、多分、his のような所有形が持つ限定性(definiteness)と that節の限定性がバッティングすることから起こっていると思うが、この文法の詳細は分からない。

これで2点を再確認できた。一つは、私の「ネイティブ」としての感覚は万能でないことだ。ある文が変だ思っても、どこが変か、感覚だけで分からないときがある。もう一つは、翻訳の難しさだ。授業で使っている教材には日本語から英訳された部分があって、John Smith is well known for his research that attempts to explain the relationship between gismos and gadgets. というセンテンスもおそらく日本語からの訳だ。この教材では全体的に翻訳の質が第一級だが、英語として少し不自然な言い回しが残っている。翻訳に見えないような翻訳はやはり不可能かも知れない。

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