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日曜日の東京は初夏の日和で、午後の渋谷や池袋は3月の悲劇が信じられないほど賑わっていた。震災直後は本が一時売れなくなったと新聞で読んでいたが、池袋のジュンク堂書店は本を探すお客さんで混んでいた。
久しぶりに池袋に行ったのは、「面白いことばのおもしろい本」というフェアを見るためだった。このフェアの本を選んだのは他ならぬ私だから、どういうものが展示されているかは既に知っていたわけだが、愛しい本たちが実際に店舗で平積みされているのを見たかったのだ。行ってよかった。特に、たまたまフェアの本棚で立ち止まって、清水由美さんの『辞書のすきま、すきまの言葉』や菅原克也さんの『英語と日本語のあいだ』などを手にとって面白そうに読み始めるお客さんを目にしたときには感動した。それで紙の本、そして街の本屋さんの良さを再確認できた。(それぞれの本を紹介するカードが汚い字で書かれていることだけはどうかなと思ったが、自分の手書きだからクレームのつけようがなかった。)
このフェアは5月末まで続く予定。お時間がありましたらば、ぜひ足を運んでください。
二週間前から続く大災害には喜べることはまったくないが、先日、イギリス人の同僚から新しい造語の話を聞いたときに少しだけ微笑ましくなった。
gaijin という言葉は、だいぶ前から英語に入って、辞書にも載っている。例えば、Merriam-Webster's Collegiate Dictionary には「a foreigner in Japan」と定義されている。(余談だが、日本語では「外人」がアジア人やアフリカ人など、白人以外の外国人を指すかどうかについては日本人の間で意見が分かれているようだ。英語の gaijin についても同じ問題があるかと思う。)
今回の震災直後、多くの外国人が日本を脱出したので、造語されたのが flyjin だ。意味は言うまでもなく「怖くてすぐ飛んで行っちゃった外人」だ。次のような文脈で使われている。
From this we can infer that the total number of flyjins is approximately 140,000. This figure does not include the intra-Japan flyjin who relocated to Kansai and other areas.
私は、ちょうど大地震の数時間前、翌日梅田で講演するために大阪に行っていたので、ニュースで初めて地震と津波を知った。そして、14日の月曜日に、不気味にも空いていた新幹線で大阪から横浜の自宅に戻った。家は無事だったが、あくる日に大学に行ってみたら、12階の研究室で多数の本が棚から床に落ちていた。それを片付けながら、紙の本をやめて電子本だけを読む決心をしはじめたが、これから長引く電力不足を考えると、太陽の光だけでも読める本はやはり捨てるべきではないと考え直した。
いずれにしても、当分の間、横浜と東京での生活と仕事をそのまま続けるつもりなので、私のことを stayjin と呼んでください。
3月18日の討議力シンポジウムは、地震の影響で中止になった。
ご無沙汰してすみません。
これからはもっと頻繁に書くつもりだが、今日はとりあえず、昨年末から紹介する予定であった本を紹介する。それは清水由美さんの『日本人の日本語知らず。』(世界文化社)。
清水さんに初めてお会いしたのは、2003年の『研究社 新和英大辞典第5版』の出版記念パーティーだった。二人ともその辞書の編集に参加していたが、その前に顔を合わせる機会はなかった。その後、清水さんの『辞書のすきま、すきまの言葉』(研究社)で一緒に仕事をするチャンスに恵まれて、清水さんの言葉への観察力に感銘を受けた。
今回の『日本人の日本語知らず。』には私はノータッチだが、共感した内容が多く含まれる。例えば、「ありますですかそれともありますですか?」というチャプターには、私がこのブログと『英語のあや』でも言及したテーマが取り上げられる。しかし、清水さんは私より何倍も面白い文体で書くので、私の拙文よりも清水さんの本のようが読む価値がある。それで強く推薦する。


