先日、通勤の途中で東京・渋谷のデパートで開かれている「大古本市」に立ち寄った。「くも本」の出現のせいか、数年前から大学の図書館を利用できるようになったからか、私自身は以前より古本を買うことが少なくなったが、この古書展は大繁盛だった。私は一応、一冊ぐらいは買おうと思ったが、レジの前に中年の男たちが長い行列をなしていたから、やめた。たぶん催物の初日だったので、その男たちの多くは一般の読者や古本収集家ではなく、古本で商売をしている業者たちだったようだ。相場より安く貴重な本を見つけて、自分の店またはウェブで転売するつもりだったのだろう。(「男たち」と書いたのは、その長い行列には女性がいなかったからだ。そのような業界なのだ。)
棚やテーブルに並べられたいくつかの辞書が目に入ったが、数年前まで集めていた古い和英辞書は見つからなかった。それでふと思いついて、大学の研究室に着いてから、早速
Internet Archive で日本語の古辞書を探してみた。いろいろあった。
ヘボンの『和英英和語林集成』はいくつかのバージョンが採録されている。下記はその
第4版(1888年)。
次を見て愕然とした。ヘボンの辞書のための漢字と熟語の索引、
Index of Chinese Characters in Hepburn's Dictionary(1888年)だ。
昨年の5月に、私が紙の『英語青年』で書いたように、現在の和英辞典にはこのような索引はないので、日本語の学習者はたいへん困っている。でも121年も前にすでに存在していたのだ。
仏教の研究家にとっては、
Hand-book of Chinese Buddhism, being a Sanskrit-Chinese Dictionary with Vocabularies of Buddhist Terms in Pali, Singhalese, Siamese, Burmese, Tibetan, Mongolian and Japanese(1884年)は今でも役に立つだろう。
John Batchelorの
An Ainu-English-Japanese Dictionary(1905年)も興味深い。
Eclectic Chinese-Japanese-English Dictionary(1884年)も。
古本の業者たちには申し訳ないが、ただの「くも本」は素晴らしい。