『英語青年』1942年12月15日号の「英語クラブ」から。
自爆
「自爆」といふのを英語で何と言ふかと時々学生に訊かれる。しかし、かういふ崇高な敢闘精神も行為も外国にはないのだから、それに対する英語のないことは勿論だが、それを英訳したものはどうなつてゐるかと気をつけて見ると、一寸眼についたのに次のやうなのがある。
Japan Times & Advertiser では嘗て Solomon 海戦か何かの戦果報告の中で、「自爆何機」といふところを Body crushed と書いて次に数字を挙げてゐたが、同日の社説に “...planes deliberately dashed against the enemy” とし、以後は何時もこの言ひ方を用ひてゐるやうだ。(米人に訊いて見たら、前者は一寸はつきりせぬが、後者なら分ると言つてゐた。)ところで、 XXth Century 十月号を見ると、p. 267 に “Torpedo planes for attacking naval units arrived on the morning of August 8 and partly through voluntary self-sacrifice, sank 4 cruisers,...” と出てゐる。 AMIKO
今の和英辞書では、「自爆」は blowing oneself up; a suicide bombing; killing oneself in an explosion. (
KOD) などとなっている.これは昨今のテロなどに関してはぴったりだが、第二次世界大戦における日本軍の行為を指すには、a kamikaze attack のほうが一般的だ。ただ、
Oxford English Dictionary によると、この意味の kamikaze が初めて英語で使われたのは、上記記事の三年後、1945年だそうなので、やはり「それに対する英語のないこと」が正しかったのだろう。