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『英文解釈教室』ノート
30


Chapter 14 共通関係 ① 文の主要素の共通関係

 

 

14.1.1

 

 

* ポイント *

助動詞の並列

語釈:

release: 解放

検討:

○ can and do:

does は強調の助動詞。「現に … である」と訳すと収まりがよい。

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

14.1.2

 

 

* ポイント *

it が後のものを指す例

語釈:

prized: 重んずる

検討:

① it:

it は「いま文中で問題になっていること」と覚えるとよい。

指すものは (1) 前にあり、特定化できる (2) 前にあるが、この辺りとしかいえない (3) 希だが、後にある (4) 漠然と状況を表わす。特に (2) に注意。

② the most prized:

文字通り最上級に訳し「最も尊重されている」でもよいが、心情に力点を移し「最も大切な」、さらに比較の対象の見えない絶対最上級ととり「きわめて大切な」としてもよい。

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

14.1.3

 

 

* ポイント *

異なる時制の並列

語釈:

abuse: 乱用 → 酷使

検討: なし
訳例:

そのまま訳しておかしくないなら、語義はひねくらない方がよい。「少なからぬ土壌も生産性を」→「少なからぬ土壌が肥沃さを」

さらに一歩: なし

 

14.1.4

 

 

* ポイント *

It が二つの to 不定詞を受けている

語釈:

times: 特定の時期

検討:

○ times:

(1) (u) (抽象的な)時、(空間に対する)時間 (2) (u)(c) 期間 (3) (c) (特定の)時 (4) … 回、倍

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

14.1.5

 

 

* ポイント *

掛かり方に注意

語釈:

memory: (c) 記憶力 cf. (u) 記憶
fresh: 新鮮な → 最新の
stories < story: 話 → 噂話
celebrity: (c) 名士
knock: こつ
entertainingly: 面白く

検討:

○ , or:

a good memory と a knock が大きな並列。bits of fresh gossip と little stories of some celebrity が小さな並列で、a good memory と繋がる。that she had read or heard somewhere は little stories of some celebrity に掛かる。

訳例: 略
さらに一歩: なし

 

14.1.6

 

 

* ポイント *

異なる品詞の並列

語釈:

smooth: 障害のない
responsive: 反応しやすい

検討:

○ remind:

remind 人 of 〜 人に 〜 を思い出させる remind 人 that 〜 人に 〜 を気づかせる

ここでは前置詞句 of our own death と that 節 that our body … が目的語として並列しているが、破格。

訳例:

remind はこの場合、意味を狭めて「気づかせる」としたほうがよいだろう。

さらに一歩:

○ that:

この that を、同格名詞節を導く接続詞ととれないだろうか?

とれない。その場合はふつう、前にくる名詞は抽象的なもの(discovery, assumption, rumor など)に限られる。

 

14.1.7

 

 

* ポイント *

do は代動詞

語釈: なし
検討: なし
訳例: 略
さらに一歩: なし

 

14.1.8

 

 

* ポイント *

be+p.p. (V+C) と V の並列

語釈:
governess: 女家庭教師
検討:

○ be+p.p. (V+C) and V:

be+p.p. が一体で V と読んでもいい。

訳例: 略

さらに一歩: なし

 

14.1.9

 

 

* ポイント *

and の結ぶもの

語釈: なし
検討:

○ helpful:

-ful は

(1) … に満ちた。例: hopeful
(2) … の性質がある。例: forgetful
(3) … を引き起こす。例: harmful

、の三つの主な意味がある。慎重に選択しないと誤訳につながる。

訳例: 略
さらに一歩:

○ prosperity and power:

p の音を重ねており、同義語反復。日本語なら「富強」といったところか。

 

14.1.10

 

 

* ポイント *

現在分詞が三つ補語となって連なっている

語釈:

deaf: 耳が聞こえない
such: そういった類のもの

検討: なし
訳例:

英文和訳では「手紙を書いているところ、特に人生を楽しんでいるところは」と直訳調でよいだろうが、翻訳なら 〜ing のしつこい反復の語感を訳に生かしたい。「手紙を書くなどとは、特に人生を楽しんでいるなどとは」。

さらに一歩: なし

 

14.1.11

 

 

* ポイント *

構文が二つにとれる

語釈:

look out: 目を向ける
see: 目に入る

検討:

○ 文型:

S+V (O+C) or (O+C) とも S+V (O M) or (O M) ともとれる。

訳例:

木の間越しに、彼らが畑の向こうを眺めると、納屋のあたりで働く農夫や、道で車を走らせている人たちが目に入る。

さらに一歩: なし

 

14.1 例題(1)

 

 

* ポイント *

並列に挿入節が入る

語釈:

survive: … より長く生きる

検討:

○ that の省略:

従属部の節と節を結ぶには、通常後にも that が必要。that 〜 and that ― 。

だが (1) 動詞が同じ(主に be 動詞) (2)節が相似形で対照、の場合は後の that が省かれることがある。

訳例: 略
さらに一歩:

○ knew < know:

know は多義。

(1) 事実を知っている。
例: He knows nothing about it.
彼はそのことについて何も知らない

(2) 自覚している。
例: She knew what she was doing.
彼女は自分の行動を自覚していた

(3) 習得する。
例: Know when to write out numerals.
数字をいつスペルアウトすべきか習得しなさい

(4) 確信している。
例: I know you left it here.
それを君はきっとここに置き忘れたんだろう

(5) 面識がある。
例: I know him personally but not well.
彼とは面識があるが特に親しい仲というわけではない

(6) 見分けがつく。
例: I know my husband by his footsteps.
私は足音で夫だとわかる

(7) 限界を心得る。
例: Their joy knew no bounds.
彼らの喜びには限りがなかった

 

14.1 例題(2)

 

 

* ポイント *

and の多用とそれぞれの意味

語釈:

late summer: 晩夏
look to: … に面する
bed: 河原
pebble: 小石
boulder: 丸石
swiftly: すばやく
channel: 回路 → 水路 → 水脈
trunk: 枝
breeze: 軽風

検討:

① pebbles and boulders:

同義語反復

② the road:

the と出てくる以上、読者がそうと了解されるべきもので、家の前の道。

③ except for:

道には葉っぱだけ、の意(前のところで、葉が落ちたといっているので、これは道に散り敷いた落ち葉)。同種のものの区別(例えば狭い道、汚れた道など、道どうし)であれば for はいらない。

訳例:

夏の終わり、私たちは村の一軒家で暮らした。そこからは川と草原の向こうに山なみが見えた。河原の石は陽に照らされ白く乾き、青く澄んだ水がいく筋にもなって流れていた。軍隊が家の傍らをすぎ、道を進み、そのたびに木々の葉にほこりがかかった。幹にもほこりは降り、その年葉の落ちるのは早かった。私たちは、部隊が道をたどるのを、ほこりが舞い風に揺られ葉が落ちるのを、兵隊が行進するのを眺めた。あとには朽ちた葉としらじらとした道が残った。

さらに一歩:

① in the channels:

水路、川床、水流の深水部、細流と多義。文脈から、夏枯れして幾筋に分かれた細流、ととる。

② troop:

troops、the troops、the soliders と具体的になってゆく。

④ breeze:

「微風」「そよ風」では葉は落ちない。「軽風」のこと。

③ bare:

表の意味では「道が裸」だが、作者の心象風景を投影させ、裏の意味「殺風景」ととっても、訳文に違和感なければ可。

*この英文に関する詳細な解説は、2019.7月発売の小著『業務用 翻訳会社の英語――商品となる訳文の作り方』(仮題、日外アソシエーツ刊)に掲載の予定。

 

 

〈著者紹介〉

柴田 耕太郎(しばた こうたろう)

 早稲田大学第一文学部フランス文学専修卒。
 岩波書店勤務、フランス留学を経、大手劇団文芸部所属など演劇活動。
 翻訳業界で約40年。(株)DHC 取締役、(株)アイディ代表取締役を経、現在翻訳教育家。
 獨協大学外国語学部・東京女子大学非常勤講師。
 『英文翻訳テクニック』(ちくま新書)など著訳書十数冊。
 演劇・映像・出版・産業各分野で実績のある翻訳実践者。
 翻訳ベンチャー(株)アイディを自社ビルを有する中堅企業に育てた翻訳経営者。
 出版翻訳者を40人以上デビューさせた翻訳教育者。
 アイディ『英文教室』主宰。

 


 

 

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