過去の連載

私の語学スタイル

第 3 回
「言葉にならなくても、伝えなければいけないもの」

003

Style7
自分で答えを見つけてほしい

 『NO TRAVEL, NO LIFE』に収められた言葉は、最後の書き下ろし部分を除き、すべて旅の最中に書きためていたものだという。本を出すにあたり、旅の写真と、日記帳を全部見直した。写真と言葉を合わせて、旅行記や写真集とはまた違う、旅で感じてきたメッセージを載せたものにしたかったのだという。そのため、収められた写真は、国名もないし、時系列にも沿っていない。
 「1 ページ 1 ページの写真でも楽しめるし、一つひとつの言葉でも楽しめるし、全部通読した後で伝わってくるメッセージもあるしっていうものにしたかった。もともと俺音楽畑じゃない。だから CD のアルバムを作るのと同じ感覚で作った。だけど、できるだけ答えを書かないようにして書く構成にしたのね。それはなぜかというと、自分でその答えを見つけ出してほしいから。たとえば、自由って大切なんだよ、とか言っちゃったら全然面白くない。答えをもらっちゃうと、左から右に抜けちゃうと思うんだよね。ただ、自分でつかみ取ったものっていうのはすごい強い」
 これまでの須田さんの活動は、編集者、音楽ディレクター、旅する写真家と形は変わっても、表現者という点では一貫している。「これは昔からそうなんだけど、なにかを表現したいっていうのがある。撮影でも、クライアントの言う通りにやるんじゃなくて、自分の味を加えて撮るっていうのが好き」
 そんな須田さんにとって、カメラはあくまでも表現方法のひとつという位置づけだという。  「もし他の表現方法があれば、写真にはこだわっていない。写真もカメラも、すごく好きだから続けては行くと思うけど、また衝撃的な出会いがあればそっちに行くかもしれないし。だからもし筆と出会えば筆で表現するかもしれないし、今ムービーに凝ってるから、いいものが撮れればムービーに行くかもしれないし。絵本も出したいし、CD も出したい」まだまだやりたいことはたくさんという須田さんは、自分の思ったとおりに、好きなことをやり続けていきたいと語る。
 今、世界でいちばん好きな場所は、自宅バルコニーのハンモックだという。年齢も、肩書きも、言葉も、関係ない。ただ自由に、心に感じるものを大切に。それが須田さんからのメッセージだ。(M)

  • 次へ
  • 1
  • 2
  • 3
  • 4
 

関連紹介

 

▲ページトップに戻る