過去の連載

私の語学スタイル

第 2 回
「ネイティブではない先生ができること」

002

Style7
日本人に会わなきゃ!

 そもそも、旧ユーゴスラビアで育ったネーナ先生が、日本に興味を持ったきっかけはなんだったのだろう。「大きなきっかけは、大学のときに文学が好きでいろんな翻訳をしてたんだけど、先生にこれすごいから読んで、って言われたものが西脇順三郎が英語で書いた詩だったの。言葉を並べているだけなんだけどイメージがぱっぱっぱっぱって出てきて、ものすごいインパクトで、このやり方、すごいって影響を受けて。この人の作品、絶対訳したい!と思って雑誌に発表したの。それがきっかけで日本人に会わなきゃ!って思うようになって、でも同時に日本に行けるわけないって思ってた」
 というのも、当時のユーゴスラビアでは外国に持参できるお金は 60 ドルのみ。学生の身分で欧米の国に留学することはできても、アジアの国に行くにはそれこそ月に行くのと同じような感覚があったそう。それでも日本が好きという気持ちを持ち続けたネーナ先生はイギリスでの仕事を通じて、神田外語学院の関係者と出会い、「縁」を感じて講師として来日することになる。
 それから、日本に憧れていたもう一つの大きな理由として、12 才のときから続けている空手をあげてくれた。日本での様々な苦労を乗り越えて、ここまでやってきたのは、空手の精神のおかげ、と言い切る。
 「空手は母国で始めて、やめたり、またやったり、日本に来てまたやって、子どもを産んでやめて、また戻ったり、指も何回も折ったりね。それでもまだやる。その続けようという気持ちは、自分の国じゃなくて日本から教わったことだと思う。空手の精神が私をここまでつれてきたと思うよ。ここまで本当にいろんな問題があったの、英語のネイティブみたいな顔をしているのにネイティブじゃないこと、共産国から来たことに関してひどいことを言われたり、子育てでも子どもがハーフで(私はダブルって呼んでいるけど)それで傷つけられたりしたこともあった。でも空手を続けていたから精神的に強くなってつらいときもがんばれました」

Style8
日本人の英語の先生、英語学習者へ

 「外国人でも悪いことなんかない、ネイティブ教師じゃなくても悪くない、なぜかというと言葉以外の自分を認めたから。私だからこそできるいろんなことがあるっていうことを認めたの。だから日本人の英語の先生、英語を習っている人もそうだけど、英語を完璧に話すことを目的にすれば、参っちゃう、無理。完璧はできない。完璧に近いところまではいける、もちろん、でも完璧はできない。でもその人にしかない要素があってプラス英語もできるということだったら可能なんです、そしてむしろそのことが重要っていうことを私は言いたい」
 これが、日本人の英語の先生、英語学習者へのネーナ先生からのメッセージ。自分のことをきちんと認められる先生だからこそ、子どもや学生達をひとりひとり認めることができるのだと、ネーナ先生をみていて強く思う。これからも熱い授業で、熱い先生をどんどん育てていってほしい。 (Y)

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