日本語で性格がまるく!
日本語ができて変わったことは、とたずねると、「性格がまるくなった」とボビンさんは答える。
「日本語って基本的にすごくやわらかい。たとえば、日本人でもアメリカに行くと性格が変わってくるじゃない。もっとフランクになったり。年上とか年下とか関係なくyouって呼ぶから。日本語だと、年上に『あなた』とか、『おまえ』とか絶対言わない」
日本でも伝統的な価値観が崩れはじめ、厳しい上下関係を疑問視する声もある。そんななか、ボビンさんは日本式の上下関係の大切さを実感したのだという。
「色々大変な面もあるけど、やっぱり長く生きている人はそれだけいろいろ経験している。尊敬とまではいかないとしても、たとえば『おまえ』とは言わない。『◯◯さん』で、ひとつの区切りを持って接する。そういう風に言葉を通して勉強になった部分はあるね」
日本に来たら、日本語をしゃべらないと!
世界共通語としての地位を不動のものとしている英語だが、『英語第一』のような風潮に、ボビンさんは疑問を感じるそうだ。
「日本に来たばかりのころは、文化交流とかによばれて、参加した。そうするとすぐ、集まった人たちが英語で話しかけに来るわけ。こっちはネパール人だから、別に英語は関係ない。外国人だったら英語、っていう考えの人が多いよね」
わざわざ日本まで来て、日本語を勉強しているのに、複雑な気持ちだったのだという。そんななか、ボビンさんにとって印象的な出来事があった。
「駅で、牛乳を買ったの。それで『ミルクください』って言った。そしたら店員のおばさんに怒られたのね。『ミルクじゃない、牛乳だっ』と。『あたしだって外国行くとき一生懸命英語しゃべろうとしてるんだから。日本に来たら日本語しゃべりなさいっ!』って。すごい、気持ちよかったよ。一生忘れられない」
「英語はあくまでもツール。英語ができて、言葉でコミュニケーションして、それだけで十分、っていうんじゃなくて、言葉がわからなくても、気持ちのコミュニケーションも大事にしていくのが、大切じゃないかな」