人間はみんな一緒
ネパールと日本を行き来するボビンさんには、この2つの国が、逆の方向へ進んでいっているように思えるのだという。日本は経済が発展し、物質的には豊かになった。しかし、その反動として、ロハス、エコなどといった、素朴な暮らしに立ち戻ろうという動きも出てきている。
一方のネパールでは、質素だった生活に、一気に便利なものが入ってきているのだそうだ。その急激な変化を、ボビンさんは実体験として感じてきたのだという。
「日本では50年くらい前かもしれないけど、自分は、5、6歳のときにはじめてテレビというものを見た。カトマンズには、30年、40年前までは電気もあんまりなかったし。ものすごいスピードで世界は変わっている、というのを自分の体験として感じてきた。でも、物質的な発展が、人を幸せにしているのか、すごく疑問に思う」
このような考えのもと、ボビンさんは「キャンドルナイト*1」や「Earth Day*2」など、平和や環境の大切さをうったえるイベントに積極的に参加している。表面的な文化交流を超えた、「精神面での交流」をめざしているのだという。
「電気を消して、ロウソクを囲んで座ったら、黒人も白人もなんにも関係ない。暗くて見えないから。ネパールと日本を行き来して感じるのは、人間はみんな一緒だっていうこと。みんな悲しいことは悲しいし、食べなきゃ生きていけない。あとはどれだけ道具を使って便利に生きているか、っていうだけの違い。日本ほど便利な国は、ほかにないかもしれない。でも、それはいろいろな国の資源やエネルギーを使うことで成り立っているし、いろんなところにそのしわよせが来ている。それには限界があるから、あるもので満足していくっていうのが、これからの課題だと思うね」
*1 キャンドルナイト: 「でんきを消して、スローな夜を」を合言葉に、環境NGOの呼びかけではじまった運動。夏至・冬至前後の数日間、夜 8 時から 10 時まで電気を消して、ゆったりとした時間のなか、平和や自然環境をはじめ様々なことに思いをはせ、ライフスタイルを見つめなおしてみようというもの。
*2 Earth Day : アメリカからはじまった、地球環境について考えようという運動。4月22日がアースデイ・地球の日とされており、世界各地で集会が催される。