過去の連載

私の語学スタイル

第 10 回
「なぜ」という気持ちをたいせつに

010

Style1
つらかったのも、楽しかったのも・・・

 来日当初、つらかったことと楽しかったことをそれぞれ教えてもらうと、姜先生は両方「言葉」だったと教えてくれた。今では先生と話していても、言葉で苦労されたことなど、分からないが、誰にでも「最初」があるのだ。
 「日本語に関して、自信満々だったんですけどね、勉強してきてるから。で、実際来日して、しゃべるんだけど、私が学んでいた日本語は、実は戦前の日本語だったんですね。韓国での私の先生は当時みんな60歳を過ぎていて今ではもう、90近い方達ですよ。だから戦前の日本語そのまんまで、来日当時、私は20代後半だったんだけど、そういう人の日本語を話すから、『この人、何様?』みたいになってしまって」
 「それから発音もめちゃくちゃだったみたいですね。韓国の人は、清音と濁音の区別とか、『つ』とか、独特の苦手な部分があるんですけど、それは日本で生活してみないと、気づかないんですよ。だから学校に行って、適当に親切そうな同級生をつかまえて、『私の『つ』の発音をチェックしてくれ』って言ってやってましたね。最初はやってもらうと、20回30回言っても『つ』にはならない。100回ぐらいやると1度くらい『それだ!』と言われて」
 違いが自分で分かるのに何ヶ月もかかるような作業だったにも関わらず、とても楽しい経験だったという。
 「相手はチェックするの、大変だったと思いますけど、自分はすごく楽しかったですね。ああこの発音だと通じないけど、こう言えば通じるのかっていうのが妙に分かってきて、それが楽しくて」

Style2
言語学との出会い

 最初は日本社会についてよく知るために、日本の大学で、東洋史の勉強をしようと思っていたという姜先生。「でも、そのために日本語の勉強をしているうちに、ああ言語っていうのも面白いなと思うようになったんです。とくに、韓国語と日本語は非常に似ているところもある。でもどうしてなのかというこの2つの言語の関係についてははっきりしていないんです。その点が魅力で、これに取り組んで解明することができたらおもしろいだろうなという野望を持つようになったんですね。この問題への関心は今も捨てていませんが。」大学では国語学を専攻し、言語学の研究を始めることに。

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